共同創造 Co-production 資料10: 市民と行政との協働【2】(NPOと協働する行政職員の8つの姿勢、行政と協働するNPOの8つの姿勢)

(※「市民と行政との協働【1】」から続きます。)
今回は、前回に引き続き、「市民と行政との協働」に関する資料をご紹介いたします。

前回お示しした東京都東村山市の協働マニュアルには、「協働の原則」以外にも、大切な考え方として「NPOと協働する行政職員の8つの姿勢」(NPO活動推進自治体ネットワーク 協働を進めるための行政職員の意識改革研究会編)が引用されておりました。

その内容は…

  1. 公共は「官」だけが担うのではなく、NPOや企業などさまざまな主体と共に担う意識を持つこと
  2. 協働とは特別なことではなく、チャレンジであり、失敗を恐れない意識を持つこと
  3.  ニーズは、現場に足を運び、当事者の生の声に耳を傾けてこそわかるという意識を持つこと
  4. 協働相手とは対等である。本音で語り合えてこそ、協働であるという意識を持つこと
  5. 協働の現場では、自らの責務として率先して行政内部で連携し相乗効果を得ること
  6. 協働には十分なコミュニケーションが必要であり、共感するには時間がかかるという意識を持つこと
  7. 情報は市民のものであり、市民のために活用してこそ価値がある
  8. 協働できない理由を探すのではなく、受益者のためにどうしたら実現できるのかを考えること
    …といったものとなっています。

上記の「NPOと協働する行政職員の8つの姿勢」の内容は、日本NPOセンターのwebサイトhttps://www.jnpoc.ne.jp/?page_id=10158にも記載されており、このページには、「行政と協働するNPOの8つの姿勢」(民間NPO支援センター・将来を展望する会 編)に関しても記されています。
また、後者については、https://www.jnpoc.ne.jp/?page_id=457にさらに詳しい説明が述べられています。

その「行政と協働するNPOの8つの姿勢」は…

  1. 市民の共感と参加を基本とする事業づくりの能力を持ち、それを通じて本当の市民自治を促進すること
  2. ミッションと協働事業の整合性を考え、事業を展開すること
  3. 行政に依存せず、精神的に独立していること
  4. 相互のシステムの違いを理解しつつ、解決の糸口を見出していく姿勢を持って努力すること
  5. NPOならではの関与によって協働事業の質を向上できるような専門性・特性をもつこと
  6. ルールの違いを乗り越えるための能力を備えておくこと
  7. 協働した結果は、市民の共有財産として広く積極的に知らせていくこと
  8. 契約にあたって、対等な立場で交渉する力をつけること
    …といった内容となっています。

これらの「8つの姿勢」も、「市民/NPO」を「当事者」に、「行政/官」を「専門職」になぞらえてみると、「保健医療領域における当事者と専門職の共同創造」に向けて多くの示唆を与えてくれる資料ではないかという思いから、ご紹介してみました。

東京大学 コプロダクション研究チーム 小川亮
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研究チームの印象に残ったこと・自由な感想:
単語を変えればそのままさまざまな領域で当てはまる感じ。
日本NPOセンターのNPOと共同する行政職員の8つの姿勢、行政と共同するNPOの8つの姿勢は、様々な地域・組織の沢山の人が参加して作られている。
日本語で作られているため読んでいてわかりやすくてよい。
コプロダクションへのヒントはほかの領域にもたくさんあるので、そういったところにもアンテナを広げていきたい。
コプロダクションとか共同創造以外の他の言葉(たとえばcollaboration, engagementなどいろいろ)を使っているところもたくさんあるのでもっと知りたい。

共同創造 Co-production 資料09: 市民と行政との協働【1】(東京都東村山市協働マニュアル)

前回ご紹介した書籍では、co-production(コ・プロダクション;共同創造)の源流が、公共サービス領域にあるという経緯が述べられておりました。
日本でも、それに通ずる試みとして、(「co-production」や「共同創造」ではなく「協働」という異なる用語が用いられてはおりますが、)「市民と行政との協働」が各所で実践されているようです。
例えば、試しにGoogleで「協働」と検索してみると、様々な自治体のwebサイトに「市民との協働」に関する記載が見出されます。
一例を挙げると、東京都東村山市では、「協働とは」「協働の原則とは」といった説明https://www.city.higashimurayama.tokyo.jp/kurashi/shiminkatsudo/suishin/index.html
に加え、「協働を進めるためのマニュアル -職員用実務編-」といった資料(↓ pdf)も公開されています。
https://www.city.higashimurayama.tokyo.jp/kurashi/shiminkatsudo/suishin/kyodo_manual.files/2018_kyodo-manual_syokuin.pdf

マニュアルでは、協働についての基本的な考え方に加え、協働事業の進め方や「協働事業ふりかえりシート」といったツールも紹介されているため、co-production(共同創造)で何らかの活動や事業を実践してみたい方にもご参考になるのではと考えています。

少しだけ内容をご紹介いたしますと、例えば「協働の原則」として…
「自主・自立の原則」
公共的な事業・サービスに対して、市民活動団体の自主性を尊重するとともに、お互いに依存していくのではなく、それぞれの責任において事業が展開できることを目指し、互いに自立した存在と認めることをいう。
「相互理解の原則」
それぞれの長所、短所、立場を十分に認識し、理解し、尊重しあうことをいう。
「対等の原則」
市民活動団体と行政は、上下の関係でなく、常に対等の立場であることをいう。
「目的共有の原則」
市民活動団体と行政は、公共的な事業・サービスの提供が市民の利益につながるという目的を共有することをいう。
「公開の原則」
市民活動団体と行政の関係が公開されることをいう。

…という5点が挙げられています。

こちらのブログで主に取り上げている「保健医療領域における当事者と専門職」との関係ではなく、「市民と行政」との関係にまつわる内容ですが、「市民活動団体」を「当事者」に、「行政」を「専門職」に置き換えて考えてみると、私たちにとっても大切なヒントがたくさん発見できる資料ではないかという視点から、ご紹介してみました。
(※「市民と行政との協働【2】」に続きます。)

東京大学 コプロダクション研究チーム 小川亮