共同創造Co-production 資料19続き3: 共同創造の実践

資料19「Public Services Inside Out: Putting co-production into practice」(2010年4月発行)
https://neweconomics.org/2010/04/public-services-inside
共同創造の実践 の中身のご紹介の続きです。(前回は資料19続き1 にPart 1とPart2を、資料19続き2 にPart 3とPart 4をご紹介しました)

Part 5: Facilitating rather than delivering  提供するのではなく促進する

共同創造されたサービスであれば、「この人はどのサービスを必要としているだろう?」という問いではなくて「この人はどんな暮らしを送りたいだろう?」「この人にとっての豊かな暮らしとはどんなものと感じているだろう?」という問いからはじまるのではないだろうか。

実践例:
Local Area Co-ordination (LAC) (もとはオーストラリア西部で1988年にはじまったアプローチで今やオーストラリア、スコットランド、カナダ、アイルランド、ニュージーランドなどに広がっている。個人はみんな違い、障害のある人にとっての豊かな暮らしの核となるものは、障害のない人にとっての豊かな暮らしの核となるものと変わらない、という考えに基づいている。LACでは個人や家族、地域の貢献が価値あるものとされ、LACでは個人のネットワークやコミュニティのネットワークの中でそれぞれの技術や資源や強みが提供されるようにサポートしている。LACのサービスは他のサービスよりもコストは低く、また家族がケアを続けやすく、自立度が高まるといった調査結果がある。たとえば重度のサポートが必要な子をもつ親同士をつなげたことにより、それぞれの子供が特別な送迎手段を手配するのではなく、家族が交代しながら自家用車で毎日学校に通うことができるようになった例などを含め、その地域の中で、それらの個人の生活に合わせて、個人と専門職によって共同創造されている。
KeyRing(知的障害のある方のための居住や相談サービス。9名の成人メンバーと1名のボランティアが徒歩15分圏内くらいに住み、ボランティアはメンバーの居住や地域とつながるためのサポートを提供する見返りに無料で住まうことができる。)

Part 6: Recognising people as assets  人々を資産として認識する

人々を、受け身のサービス利用者、あるいはシステムのお荷物として見るのではなく、サービス構築やサービス提供の対等なパートナーとして認識する

実践例:
Paxton Green(時間ベースの通貨timebankingを活用している診療所。自分の得意なことを誰かに教えたり、誰かを車に乗せてあげたり、お話をしたり、など、相互サポートの考え方が根底にある。ここでは患者のことを、どのような健康問題があったとしても、様々な経験、技術、時間、ほかの人とつながる人間力のある人として見る。多くの医師は、薬よりも、週に一度の友好的な時間の方がその患者に効くのではないかと思うことも多いものだが、タイムバンクを活用することで、そのような社会的処方をすることができ、相互的な解決が得られる。そして、医師による患者に対する見方も変わった。)
Elderplan Member to Member Scheme, Brooklyn US(健康保険企業によって運営される。メンバーがほかのメンバーの世話をすることでタイムドルを得て、自分が必要な時にはまたほかの誰かからサポートを受けられる。誰かのサポートをするメンバーにとっても、朝ベッドから出る理由となり、健康への効果があった。)

Co-housing at the Threshold Centre(共同住居)

Fureai Kippu, Japan 日本の「ふれあい切符」も紹介されていました!

Part 7: Challenges, conclusions and future work 結論と今後の課題

どの実践も、成功している部分と、課題の両方がある。

サービスの「提供」ではなく、サービスの共同創造(Co-production)を主流としていくための課題としては
1.Funding and commisioning co-production activity 共同創造にお金をつけて、共同創造活動が行われるような方針が必要。共同創造は幅広く多重な活動であるため、効率性や特定の目的・効果を重視してしまうコミッショナー(理事や役員?)からすると、共同創造はなんだかまとまりのないものに見えてしまう。(たとえば地方政府がサービスを地域の事業所などに発注するにあたっては)コストの安さだけで選ぶのではなく、サービスの共同創造が行われているかも質問に入れるなど。
2.Generating evidence of value for people, professionals, funders and auditors 住民や専門職、自治体などにとっての価値を数値でも伝えられるようにエビデンスを蓄積していく。
3.Taking successful co-production approaches to scale ある地域で行われているものはほかのところでも再現可能なのだろうか。共同創造は小さな組織に合うもので、顔の見える関係の中で成功していく。これらを拡大していくにあたっては、ヒエラルキーのあるような、あるいは中央集権的なものから離れなければならない。各地域に広げたとしても、その地域地域での規模は小さくする。ほかの地域をそのままコピーして導入するというのは失敗につながる。
4.Developing the professional skills required to mainstream co-production approaches 共同創造を実践する人にはどのようなスキルが必要だろうか?人々のもっている力を資源として見るスキル、人々が自分自身で発展していくためのスペースを作るスキル、人々に対して何かをするのではなく共に活動するスキルが必要である。ケアする文化から、可能性を広げる文化への変換。その地域についての知識や、その知識を持っている人とつながる能力が必要。

この資料が、12年前に発行されていたんだなぁ、と思うと、すごいなぁと思いますし、その後さらに共同創造実践は英国でどんどん発展しているのだろうと思いました。
なお、英国の資料を読むときに、日本とは医療や福祉の制度が異なるので、ピンとこないところも多々あります。たとえばコミッション、コミッショナーというのがよく出てきて、おそらくイメージとしては、国とか自治体とかがたとえば地域住民の健康を守る事業を事業者にこんなことをしてくださいって条件を提示して、入札した事業者の中から発注先を選んで委託する、って感じなのかなぁ、と思っています(詳しい方、教えてください)。そして、たとえば福祉の場合、ケアの質がしっかりしていいて価格の安いところへ発注していたのを、今後は共同創造のなされ度合いなども、その条件として問うてはどうか、というのがPart 7の1で述べていることなのかなぁと思いましたがどうなのでしょう。それに加えて、英国の制度やシステムの在り方もどんどんと変わっていく印象があって、なかなか意味を読みこなせないところも。。
東京大学 コプロダクション研究チーム 宮本有紀

リカバリーカレッジの文化祭が岡山市で開催されました(2022/3/20)

岡山で「みんなでカレッジ」
リカバリーカレッジ文化祭が2022年3月20日(日)に開催されました。

岡山市の商店街の中で活動しているリカバリーカレッジOkayamaさんが主催してくださいました。
商店街の中にあるカレッジで、オンラインと対面の企画がありました。
さまざまな地域で活動するリカバリーカレッジのみなさんとお会いできてとても楽しい時間でした。

https://asunarofuku.jp/content/files/asunaro/zaidan/rc20220320.pdf