共同創造Co-production資料26 その1: 精神保健領域で共同創造の原則を実践する

コプロダクション(共同創造)の資料類は、英国でたくさん発表されていますが、オーストラリアからもどんどん出てきている印象があります。
今回は、2018年にメルボルン大学から出されている Co-production: putting principles into practice in mental health contexts(共同創造の原則を精神保健領域での実践に取り入れる)
https://healthsciences.unimelb.edu.au/departments/nursing/about-us/centre-for-psychiatric-nursing/news-and-events/test
についてご紹介したいと思います。

上記メルボルン大学の紹介記事によると、この資料はconsumer academic(当事者研究者?)であるCath Roperさんと、consumer consultant and peer supporter(当事者コンサルタントでありピアサポーター)であるFlick Greyさんと、senior project officer from Victoria’s Department of Health & Human Services(ヴィクトリア州保健福祉省のプロジェクト長)のEmma Cadoganさんの3人と、たくさんの方達で一緒に作られたとあります。

「コプロダクションにおいて最も重要なことは、考え方を変え、探求したり学んだりすることを受け入れる文化、当事者の知識や専門性を真に価値あるものとして扱う文化を確立することである。」
「コプロダクションは、政府、専門職、当事者や地域などが担い手になり得る。そして、サービスや医療、政策、プロジェクト、研究、研修などのアイディア、解決策、成果などを共に作り上げることができる。」
「コプロダクションは、パートナーシップを築いている関係の中のパワーの違いを認識し、それに対処しようとする」
「コプロダクションには時間がかかる。信頼し尊重し合うような関係を築くには、時間と配慮が必要である。不平等について話し合ったり対処したりするには、時間と配慮が必要である。」
「当事者ははじまりのはじまりからパートナーである」
「パワーの差は認識され、検討され、対処される」
「当事者のリーダーシップと能力が開発される」

など、パワー(power)についての言及がたくさんあります。

精神保健領域で当事者(consumer)と言われる方々と専門職の間にあるパワーの違いを認識することはコプロダクションのベースなのだな、と再認識しました。

資料の冒頭に、「コ・プロダクションはモデルではなく、むしろ価値観と原則を持つ理論である。」(In fact, co-production is not a model, rather it is a theory with a set of values and principles.) と記載されていて、モデルではなく理論というあたりについて、どういうことだろう?ともっと知りたいと思っています。
東京大学 コプロダクション研究チーム 宮本有紀