共同創造Co-production資料27 共同創造の測定と評価 その1

コプロダクション(共同創造)の資料の紹介です。今回は、学術論文で、Measurement and outcomes of co-production in health and social care: a systematic review of empirical studies(医療と社会福祉における共同創造の測定と成果:システマティックレビュー) の内容を、できるだけわかりやすく紹介することに挑戦してみたいと思います。

書誌情報は以下の通りです
Nordin A, Kjellstrom S, Robert G, et alMeasurement and outcomes of co-production in health and social care: a systematic review of empirical studiesBMJ Open 2023;13:e073808. doi: 10.1136/bmjopen-2023-073808
https://bmjopen.bmj.com/content/13/9/e073808.long
公開されている論文なので、どなたでも読めますし、Google 翻訳などを用いて日本語にして読むことができると思います。

研究の概要(宮本の勝手な補足も含まれています)
背景
この研究が行われた背景としては、共同創造は医療や福祉の質を向上させる効果的な方法として推進されており、また研究もなされているものの、共同創造の成果の測定方法はさまざまであり、さまざまな共同創造の取り組みの全体的な成果をまとめて話すことが難しいということがあります。
目的
そこで、この研究では、医療と福祉の領域において行われた共同創造によるプロジェクトの研究では、その成果をどのように測定されているかを、たくさんの研究を読んでまとめました。
方法
たくさんの文献を読み、それをまとめることを学術論文では文献検討(review=レビュー)を行う、と表現しますが、この研究は、文献検討の中でも、スコーピングレビューという方法(体系的に文献を検索し、設定した基準に合った文献を全て読んでまとめる方法のうちの一つ)をとりました。
学術論文を検索するデータベースがいくつもあるのですが、そのうちのいくつかのデータベースを用いて、共同創造、共同制作といった概念を扱い、公共サービスの文脈で行われていた研究を検索し、その共同創造の過程や成果が掲載されている論文を調べました。
結果
その結果、43本の共同創造を実際に行って評価した研究が検討されました。これらの研究は、12か国で行われており、その半分以上は英国で行われた研究でした。6割の研究は、混合研究(量的研究と質的研究を組み合わせた研究)でした。それぞれの研究で共同創造の成果を測る尺度を独自に開発して用いられていたため、研究同士の比較や同じ観点での成果の蓄積はなかなかできませんでした。
全体的には、これらの研究では共同創造による成果は肯定的な結果でした。共同創造はポジティブな経験としてとらえられ、重要な学びがあったと報告されています。
結論
共同創造を測定するための共通の手法がないことは問題である。共同創造は、共同創造の過程から得られるもの、共同創造に参加する経験、共同創造の成果の3つの観点から測定されるべきものと考えられます。

この論文の内容を何回かに分けてご紹介したいと思います。

私たち自身が共同創造の研究に取り組んでおり、この論文は大切な論文なのではないかとコプロダクション研究チームのメンバーが紹介してくれました。
上記の研究の結論に記載されている3つの観点のうち、私は主に、共同創造の過程で生み出されるものや、そこに参加する人が共同創造の過程で学ぶこと(お互いについての理解が深まり、そのプロジェクトを提供する相手への理解や関心が高まり、そのプロジェクトへのやる気も高まる、など)に特に関心があるのだなと気づきました。
東京大学コプロダクション研究チーム 宮本有紀