コプロダクション(共同創造)の資料の紹介で、学術論文で、Measurement and outcomes of co-production in health and social care: a systematic review of empirical studies(医療と社会福祉における共同創造の測定と成果:システマティックレビュー) の内容を、できるだけわかりやすく紹介することに挑戦してみることの続きです。
書誌情報:
Nordin A, Kjellstrom S, Robert G, et alMeasurement and outcomes of co-production in health and social care: a systematic review of empirical studiesBMJ Open 2023;13:e073808. doi: 10.1136/bmjopen-2023-073808
https://bmjopen.bmj.com/content/13/9/e073808.long
公開されている論文なので、どなたでも読めますし、Google 翻訳などを用いて日本語にして読むことができると思います。
今回は、結果の内容に入っていきたいと思います。
この文献検討でわかったことの抜粋
この研究では、実際に行われた共同創造のプロジェクトに関する研究43本が扱われています。
ここで文献検討の対象となった論文は、2012年から2019年の3月までに出版されたものでした。
そのうち23本が英国、6本がオーストラリアの研究で、そのほかの国を含め12か国からの研究でした。
これら43本の保健医療福祉に関する共同創造研究のうち、精神保健領域の文献が14本(英国から9件)と最も多い領域でした。
この論文(文献検討の結果を報告しているこの論文)内では、サービスを利用する人を指す言葉として「user」という言葉が使われており、このuserを私的に(専門職の責任としてではなく)サポートしたり助けたりしている人を「informal caregiver」、サービスを提供している人たちのことを「providers」として記すこととしたとの記載がありました。
(共同創造のことを記載するときに、誰のことをなんと呼ぶかはいつも迷うところなので、こういった記載は重要と思いました。)
これら43本の論文の目的は何であったか?
共同創造プロジェクトやその研究を開始した人は? プロジェクトや研究をuserからはじめたというものはまれでした。
質的研究で記載されていた目的:
サービス利用者とのコミュニケーションを向上する、サービスの改革を共に行いたい、保健医療福祉への患者利用者の参画を高め、利用者と支援者がそのサービスや質についてどのように認識しているかを評価したい
量的研究のうち無作為化比較研究:
どの研究も共同創造により行われた介入のアウトカム(成果)を評価することが目的で、2つの研究はデジタルツールを用いてよりタイミングよく、よりよいサポートを提供したいというもの、1つの研究は、研究への患者と市民の参画を増やしたいというもの、また別のものは共同創造介入を通じてスタッフの行動を改善しケアをより良いものにしたいというものでした。
量的研究で無作為化比較研究ではないもの:
3本とも、サービス利用者がそのサービスを利用する経験をよりよいものにしたい
量的記述的研究:
救急医療の利用を減らしたい、スタッフの態度を向上させるために共同創造についてe-ラーニングで学ぶことの評価、患者の健康と自己管理技術の向上のための共同創造によりつくられたプログラムの評価、ケアの質のデータを通じてケアを向上する、それらの過程を通じて共同創造を増やす、共同創造の関係を向上させることによってケアの過程を発展させる、保健医療福祉を統合し患者利用者のエンパワメントを向上することで共同創造の過程と患者アウトカムを向上させたい
質的研究と量的研究の混合研究:
不利なコミュニティをエンパワーする、暴力の発生率が高いところで共同創造を査定する、共同創造に参加することの経験を評価する、共同計画が患者の体験やサービスそのものを向上するかの評価、すでに行われている共同創造の過程をさらに向上させる、などを目的としていた。そして多くの混合研究の目的は、共同創造による情報提供やサービスによる成果の評価であった。
共同創造の成果としては、有効性と向上の度合いが主なものでした。そのほか、その共同創造によってつくられたものの受容性や実現可能性を測定していたり、それを利用してみての経験を評価していました。また、患者・利用者により主導された共同創造介入を評価することを目的としているものもありました。25の混合研究のうち、患者利用者から始められた研究であると報告しているものは1件のみでした。
共同創造についての研究にも、さまざまな目的があって、共同創造の過程に関心のあるもの、共同創造によってつくられるもの(サービスなど)の有効性を評価するもの、さまざまだなと思いました。
東京大学コプロダクション研究チーム 宮本有紀