コプロダクション(共同創造)の資料の紹介で、学術論文で、Measurement and outcomes of co-production in health and social care: a systematic review of empirical studies(医療と社会福祉における共同創造の測定と成果:システマティックレビュー) の内容を、できるだけわかりやすく紹介することに挑戦してみることの続き(その3)です。
書誌情報:
Nordin A, Kjellstrom S, Robert G, et alMeasurement and outcomes of co-production in health and social care: a systematic review of empirical studiesBMJ Open 2023;13:e073808. doi: 10.1136/bmjopen-2023-073808
https://bmjopen.bmj.com/content/13/9/e073808.long
公開されている論文なので、どなたでも読めますし、Google 翻訳などを用いて日本語にして読むことができると思います。
今回は、結果の内容の続きです。
共同創造の測定に何を用いているか?
質的研究では測定尺度は使われていません。
量的研究で無作為化比較試験では、その介入に関連した健康側面に関する尺度と、その介入そのものを評価する尺度が使われていました。
量的研究で無作為化比較試験ではない研究では、それぞれの研究に関連して測定尺度が独自に作られており、そのほかその共同創造介入に関連した健康側面に関する測定尺度も用いられていました。
介入研究ではない記述的な量的研究では、それぞれの共同創造介入に関連した測定尺度が用いられ、そのうち一つは共同創造の過程での経験を測定するのに、その過程の交流の生産性に関する認識を測定するRelational Coordination Scale (RCS) を用いていました。
質的研究と量的研究の混合研究であった25件では、さまざまな尺度が用いられていました。すでに妥当性が確認された尺度が用いられているもの、先行研究で用いられた尺度と用いているもの、独自に作った尺度を用いているものがありました。研究によっては、共同創造過程に参加する患者利用者の経験を測定する調査票を用いたり、オーストラリアの研究で、オーストラリアの国立衛生医学研究評議会(National Health and Medical Research Council’s (NHMRC))の原則にどれくらいのっとった介入であったかを測定しているものなどがありました。
共同創造の成果として何が報告されているか?
さまざまなものが共同創造の成果として報告されていました。
質的研究では、実行された変革、優先事項の確認、合意、作られたツールや、持続可能性などについて述べられていました。
無作為化比較試験では、患者利用者を対象とした2つの研究で共同創造介入がよい結果であったことが報告され、自傷行為の減少と精神的不調の減少が示され、共同創造によって開発されたデジタルツールを継続して使用したいと望んでいました。
量的研究と質的研究による混合研究では、多様な成果が報告されていました。それらは4つに大別することができ、共同創造の成果とその過程、うまくいった要因、参加者への影響、学習成果でした。
成果とその過程は、たとえばケアの改善、社会的ネットワークが強くなる、などでした。
成功要因として挙げてあったものは、参加すること、緊密な関わりなどが当てられていました。
参加者への影響としては、ウェルビーイングの向上、敬意と自信、エンパワメントなどがありました。
学習成果に関しては、共同創造により学習成果が得られ、そこで学んだ原則というのがその後の向上や共同創造の発展に価値あるものとして述べられていました。
実践への示唆
この文献検討を行ったことでわかったこととして、共同創造の成果を測定する尺度はなく、推奨できるようなものもなかった。
著者らは、共同創造の過程で、プロジェクトの目的達成のためだけに共同創造が使われてしまい、共同創造の民主的原則が顧みられなかったり、参加者はその過程でよい経験をしていると感じていてもプロジェクトの目的が達成されていないというようなことのバランスを取ることに言及しています。
結論
結論として、共同創造に関する研究は、さまざまな測定方法を用いており、共同創造のよい成果が報告されていた。
この文献検討から、今後、共同創造過程におけるアウトプット、共同創造に参加することの経験、共同創造の成果の3つの観点から測定されるべきであると考えられる。
この文献検討論文は重要な論文だと思いつつ、内容が少し難解だったり、読むことに根気がいる部分などがありました。ここでご紹介しようと思わなければ、読み通せなかったかもしれません。お付き合いくださった方(がいるとすれば)、ありがとうございました。
私としては、最後の結論に記載されていた、共同創造過程におけるアウトプット(共同創造によって作り出されたもの)、共同創造に参加することの経験、共同創造の成果(共同創造によって作り出されたものからもたらされる成果)の3つの観点から測定されるべきである、ということはとても納得のいくことでした。
東京大学コプロダクション研究チーム 宮本有紀