今回は研究論文ではなく、世界の精神科領域の医療者や研究者に広く読まれている学術誌の諭説の紹介です。
Fisher, H.L. (2024), The public mental health revolution must privilege lived experience voices and create alliances with affected communities. World Psychiatry, 23: 2-3. https://doi.org/10.1002/wps.21149
ここでは、
- 「精神健康を保ったり、精神健康の改善するための施策の立案、実施、評価は、実際に精神的不調の経験をもつ人たちが、対等なパートナーシップで参加することが望ましい」
- 「実際にその状態を経験した人たちが住民の精神健康を改善するような研究や施策を主導するようになることが理想である」
- 「社会から疎外された人々がこのような対話に参加できるようになるためには、社会的・経済的な支援と柔軟性が必要であり、現在の社会を苦しいものにしている不平等を再生産しないために極めて重要である」
- 「予防の取り組みがマイノリティのコミュニティと共同設計され、理想的には草の根組織や地域社会を基盤とする組織と協力して実施されるようにすることが極めて重要である」
- 「 影響を受ける人々や地域社会が関与しなければ、提案されている公的な精神保健介入策の多くは失敗する運命にある」
といったことが記載されています。
これらのことは、リカバリーカレッジなどの共同創造に取り組んだ人から話を聞いたり、自分自身で取り組んだりしてみて、実感をもってその通りだと感じることばかりです。これまで、医療や研究の世界では、医療者や研究者の集めてきた知見が重視される傾向があったと思いますが、患者や当事者の声を聴くことの重要性、対等なパートナーシップの重要性について、このような学術誌の論説に掲載されるということには大きな意味があると感じました。これは、共同創造に触れた人たち、共同創造ではなかったとしても当事者の声に耳を傾けた人たちで、これは本当に重要なことだと実感する人たちが増え、そうしないでいる(当事者の声を取り入れずにいる)ことの危険性が実感され出したということでもあるのだろうなと感じます。
東京大学 コプロダクション研究チーム 宮本有紀