共同創造Co-production資料33 精神科ケアでの患者参画

共同創造についてお話をさせていただく機会が時折あります。そのようなときに、「共同創造」はどんな場面で?と自分なりの整理に役立った、Tambuyzerさんというベルギーの方の論文がありまして、2011年の論文ですが、自分のメモのためにもこちらに紹介させていただきます。

ここでは、共同創造ではなく、patient involvement (患者参画)がテーマなのですが、共同創造と患者参画は重なりがある考え方ですので、共同創造の資料としても意義があると思っています。

(共同創造や、患者市民参画の考え方は、この10年でどんどん広まり発展している(と私は感じている)ので、もっとわかりやすい整理などもあるのかもしれないとは思いますが。)

Tambuyzer E, Pieters G, Van Audenhove C. Patient involvement in mental health care: one size does not fit all. Health Expect. 2014 Feb;17(1):138-50. doi: 10.1111/j.1369-7625.2011.00743.x. Epub 2011 Nov 10. PMID: 22070468; PMCID: PMC5060706. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5060706/

著者らは、患者参加・患者参画・患者の関与(どれも同じ意味で使っていますのでこの先は患者参加という用語を用います)の考え方があいまいなので、患者参加について記載されている文献を分析し、患者参加について包括的に述べる、という研究です。

著者らは、患者参加を高めたり妨げたりするものとして
(i)患者に対するコミュニケーションと情報提供
(ii)患者参加に対する医療従事者の態度
(iii)患者参加に利用できる財源と時間
(iv)患者参加に関するすべての関係者の教育と支援
(v)患者参加のための手続きの利用可能性
(vi)患者参加のための法的枠組みの存在
を挙げています。

また、患者参加が起きることによる短期的な成果としては
患者のエンパワメント、患者のリカバリー、患者の満足度、医療へのアクセスのしやすさ、医療の質の高さ、健康度の向上
を挙げていました。

さらに、著者らは、患者参加の場面を整理し、
第一に、個人レベル・ミクロレベル(例えば、その人自身のケアプラン、セラピストの選択、治療の選択に関する決定への参加)
第二に、医療サービスレベル・中間レベル(例として、医療機関の顧問委員会への参加など)
第三に、政策レベル・マクロレベル(精神科医療政策を共同で決定など)
そして、研究と教育を含むメタレベルを提案する
と述べていました。

著者らは、患者参加の整理がなされておらず、たとえば参加のはしごなどは患者の意思決定の度合いという一側面だけを用いているが、もっと包括的に考える必要がある。しかし、患者参加は、関わる人や状況によって異なるので、画一的なものではない、と結論付けていました。

 

この研究では、医療の受け手を便宜上「患者」と呼ぶが、受動的な存在とみなしているわけではない、と用語の説明のところで述べていたり、論文要旨の冒頭で、精神科医療への患者参加は倫理的に求められるものである、と述べていたり、私にとっては、重要だと思われることが記載されているなと感じた文献でした。また、患者参加の場面分けが私にとってはとてもイメージがしやすくなり、自分の考えの整理や、共同創造の場面の説明にもよく使わせていただいています。
東京大学コプロダクション研究チーム 宮本有紀