リカバリーカレッジに関する文献のご紹介です。
このところ、リカバリーカレッジが世界各国で立ち上がるようになってきており、それらについて英国の研究チームを中心とした調査研究が行われ、発表されるようになってきました。
そのような研究の一部を、少しずつでもご紹介できればと思っています。
論文情報:
Hayes D, Hunter-Brown H, Camacho E, McPhilbin M, Elliott RA, Ronaldson A, Bakolis I, Repper J, Meddings S, Stergiopoulos V, Brophy L, Miyamoto Y, Castelein S, Klevan TG, Elton D, Grant-Rowles J, Kotera Y, Henderson C, Slade M, De Ruysscher C, Okoliyski M, Kubinová P, Eplov LF, Toernes C, Narusson D, Tinland A, Puschner B, Hiltensperger R, Lucchi F, Borg M, Tan RBM, Sornchai C, Tiengtom K, Farkas M, Morland-Jones H, Butler A, Mpango R, Tse S, Kondor Z, Ryan M, Zuaboni G, Hanlon C, Harcla C, Vanderplasschen W, Arbour S, Silverstone D, Bejerholm U, Powell CL, Ochoa S, Garcia-Franco M, Tolonen J, Dunnett D, Yeo C, Stepanian K, Jebara T.
Organisational and student characteristics, fidelity, funding models, and unit costs of recovery colleges in 28 countries: a cross-sectional survey.
The Lancet Psychiatry. 2023;10(10):768-79.
https://doi.org/10.1016/S2215-0366(23)00229-8
著者が非常に多いため書誌情報が長くなっていますが、題名のみを抜き出すと:
Organisational and student characteristics, fidelity, funding models, and unit costs of recovery colleges in 28 countries: a cross-sectional survey
(28カ国のリカバリー・カレッジの組織と受講者の特徴、フィデリティ、資金調達、コスト:横断的調査)
です。
この研究では、リカバリーカレッジが存在するすべての国(28カ国)のリカバリーカレッジに対して調査が行われました。行われた調査は、以下です。
- リカバリーカレッジの組織や受講者の特徴
- リカバリーカレッジの原則と考えられているものにどれくらい沿っているか(フィデリティ(忠実性)尺度RECOLLECT)
- 資金調達はどうしているか、コストはどうなっているか
この調査で運営されていることが確認されたのは5大陸28カ国、221のカレッジで、そのうち174のカレッジが回答しました。
結果として、リカバリーカレッジの原則への忠実性は、多くのカレッジで高いスコアでしたが、地域によりその得点が異なるものもあり、「共同創造」や「それぞれの受講生に合わせ個別化する」という項目は、アジアのリカバリーカレッジでイギリスよりも低いという結果でした。
今回の調査に参加したカレッジ全体を合計すると、年間予算は3000万ユーロに上り、55161人の学生に19864のコースを提供していルことが明らかになりました。
以上が、この研究の要約です。
この研究で、アジアの方がイギリスよりも共同創造を行っているということと、受講者に合わせ個別化するという項目の得点が低いという結果となっています。その結果に対する考察として、リカバリー志向の実践がイギリスよりモアジアの方が低いという他の研究の結果とも一致している。それと同時に、西洋と東アジアでの異なる特徴、たとえば、同じ程度に行っていてもアジアの人の方が控えめに点をつける可能性や、アジアの方が集団主義の考え方が高く、個別性に合わせるということがその価値観に合わない可能性、精神疾患の当事者も参加していても医療者に異議を唱えたりしにくい可能性などが述べられています。
この英国の研究チームに、さまざまな国のリカバリーカレッジの研究者が参加していて、私も参加させていただいており、皆がとても熱心で感動します。
それぞれの国や地域の文化とリカバリーカレッジの関連については、このほかにも研究がなされていますので引き続きご紹介していきます。
東京大学コプロダクション研究チーム 宮本有紀
