リカバリーカレッジに関する文献のご紹介です。
リカバリーカレッジに関する研究の一部を、少しずつでもご紹介できればと思っていて前回、28カ国の調査についてご紹介しました。
今回も同じ28カ国調査からの研究論文です。
論文情報:
Kotera Y, Ronaldson A, Hayes D, Hunter-Brown H, McPhilbin M, Dunnett D, Jebara T, Takhi S, Masuda T, Camacho E, Bakolis I, Repper J, Meddings S, Stergiopoulos V, Brophy L, De Ruysscher C, Okoliyski M, Kubinová P, Eplov L, Toernes C, Narusson D, Tinland A, Puschner B, Hiltensperger R, Lucchi F, Miyamoto Y, Castelein S, Borg M, Klevan T, Tan Boon Meng R, Sornchai C, Tiengtom K, Farkas M, Moreland Jones H, Moore E, Butler A, Mpango R, Tse S, Kondor Z, Ryan M, Zuaboni G, Elton D, Grant-Rowles J, McNaughton R, Hanlon C, Harcla C, Vanderplasschen W, Arbour S, Silverstone D, Bejerholm U, Powell C, Ochoa S, Garcia-Franco M, Tolonen J, Yeo C, Charles A, Henderson C, Slade M.
28-country global study on associations between cultural characteristics and Recovery College fidelity.
npj Mental Health Research. 2024;3(1):46. doi: 10.1038/s44184-024-00092-9
https://www.nature.com/articles/s44184-024-00092-9
前回紹介した論文同様、著者が非常に多いため書誌情報が長くなっていますが、題名のみを抜き出すと:
28-country global study on associations between cultural characteristics and Recovery College fidelity.
(文化的特徴とリカバリー・カレッジのフィデリティ(忠実性)の関連性に関する28カ国のグローバル研究)
です。
この研究の背景には、リカバリーカレッジは、Western, educated, industrialised, rich, and democratic (WEIRD) countries(欧米、高学歴、先進国、富裕、民主主義の諸国)では有効であることがわかっているものの、それらの国以外では文化の違いなどがあり、リカバリーカレッジの運営への考え方にも違いがあるのではないか、という疑問がありました。
そこでこの研究では、Hofstede(ホフステード)の文化的次元理論を用いて、6つの文化的特性(「権力距離(権力格差) Power Distance」、「個人主義 Individualism」、「達成・成功への動機付け Success-Drivenness」、「不確実性の回避 Uncertainty Avoidance」、「長期志向 Long-Term Orientation」、「耽溺(人生の楽しみ方) Indulgence」)とリカバリーカレッジの運用のフィデリティ(忠実性)との関連を見ています。
この研究も、前回紹介したHayesら(2023) の研究と同じデータセット(リカバリーカレッジが存在するすべての国(28カ国)のリカバリーカレッジに対して行われた調査)が使われています。
(なお、方法を読むと、リカバリーカレッジがあるかもしれない国としてまずは49カ国があがったが、事情通やその国の関係者に聞き、30カ国に211リカバリーカレッジがありそうだとわかったものの、調査をしてみたところ、そのうち2カ国のカレッジはこの調査の包含基準に合わなかったため除外をされたそうです)
各リカバリーカレッジの所在国の文化的特性は、Hofstedeによる、111カ国の国それぞれの文化的特性の点数を用いて解析に用いています。
結果として、「個人主義」と「耽溺主義」のレベルが高く、「不確実性回避」のレベルが低いほど、リカバリーカレッジ原則へのフィデリティ(忠実性)が高いことがわかりました。個人とその近親者のニーズを優先し(個人主義)、人生を楽しむために人間の基本的な欲求を比較的自由に満たすことを受け入れ(放縦・耽溺)、未知の状況を受け入れる(不確実性回避が低い、すなわち不確実性の受容)文化は、リカバリーカレッジの原則への忠実性が高い傾向がありました。
リカバリーカレッジの原則とされているものはWEIRD諸国の文化に沿ったものであり、リカバリーカレッジが世界でその効果を発揮していくためには、リカバリーカレッジの原則とするものにほかの文化の視点を取り入れる必要があるのではないか、と提言されています。
確かに、リカバリーカレッジもそうですが、リカバリーの考え方、学ぶことへの考え方などに、英国と日本では違いがありそうだなと感じることは多々ありました。この論文の筆頭著者は小寺康博さんというのノッティンガム大の研究者で、メンタルヘルスや文化に関して、精力的に研究をされていらっしゃる素敵な研究者です。
東京大学コプロダクション研究チーム 宮本有紀
