共同創造Co-production資料41: メンタルヘルス科学の第三の柱

研究の共同創造(Co-production)に関する論文がたくさん出版されるようになっており、研究を共同創造でやっていこうという流れが大きくなっているのを感じます。

今回も、研究の共同創造に関連する資料のご紹介です。

論文情報:

Downs J. Beyond the methodological binary: coproduction as the third pillar of mental health science. BMJ Mental Health. 2025;28:e301807. https://doi.org/10.1136/bmjment-2025-301807

題名は、
Beyond the methodological binary: coproduction as the third pillar of mental health science
(方法論の二元論を超えて:メンタルヘルス科学の第三の柱としての共同創造)
です。

この論文では、コプロダクションは理論的理想ではなく、臨床的にも倫理的にも必要なものであるとして、メンタルヘルス領域の研究を質的研究、量的研究といった方法論の二元論を超え、本質的な探究の柱としてコプロダクションを提案しています。

この論文は、conceptual review(概念レビュー)というものを行っていて、文献(研究論文)を検索してヒットしたいろいろな研究や自信の経験から整理して、意味を深く考えながら検証する概念分析という方法でまとめています。

この論文に記載されていることの全てをここで紹介することはしませんが、たとえば、コプロダクションの必要性の項では、人種差別のあるコミュニティ、LGBTQ+の人々、複雑なトラウマの歴史を持つ人々など、社会から疎外されたグループや排除されがちな人々の声を中心に据えた研究などの例が挙げられていました。

また、コプロダクションの倫理的課題として、見かけだけの参加(Tokenism)、感情労働(Emotional labour)、力の不均衡(Power imbalances)、選出や代表性(Selection and representation)、構造的な障壁(Structural barriers)が挙げられていました。

 

ここ数年で研究をコプロダクションで!という論文がたくさん出ていて、読むことすら追いつかない感じです。さまざまなところからこのような声が出て、コプロダクションが当たり前になっていくのだろうな、と思っています。
東京大学コプロダクション研究チーム 宮本有紀