さまざまな経験をもつ人たちとお話しするときに、これまで医学の領域で使われていたような言葉(病識がない、とか、統合失調症患者、とか)は、何かとても失礼な言葉だったのではないか?と思うようになり、そして、医療者の視点から使っていた言葉でこれまで思考し、行動してきてしまったのではないか?と気づき始めました。
“ケアとサポートで私たちが使う言葉は、態度を形成し、行動に影響を与え、人生に影響を与える。” (Think Local Act Personal. Language.)
ということで、Think Local Act Personalにケアやサポートの領域における言葉「Language」に関する資料がいくつもアップされていました。
そしてその中に、「精神健康に関する言葉」ということで、ケアや支援を利用する人とその領域で働いている人とで作られたガイド(ページ)が掲載されていましたのでご紹介です。
たとえば
Mental health challenges
This is our preferred term for communicating about mental health conditions. We think ‘challenges’ focuses less on something being ‘wrong’ with a person, and more on the difficulties people face with their mental health due to things that have happened to them or are happening around them, and also difficulties with getting support that works for them.
(日本語に勝手に訳してみると↓)
メンタルヘルスの課題(チャレンジ)
これは、私たちが精神健康上の状態について伝える際に好んで使う言葉です。 私たちは、”課題 (チャレンジ)”という言葉は、その人の何かが “悪い “ということよりも、その人の身の回りで起きたことや起こっていること、またその人に合ったサポートを受けることの難しさによって、その人が精神的な健康に直面する難しさに焦点を当てたものだと考えています。
というような解説があります。
これは英語の言葉についてのガイドなのですが、これを日本語に訳すというよりも、日本の人にとっての好ましい日本語の言葉を考えることが重要なのだろうと思います。また、言葉は、時代と共に変わっていくものですのでどの言語だったとしても、継続的なアップデートは必要なのでしょう。
私自身は、臨床実践や、講義や研究をする中で、これまで、失礼な表現や、言われた人が傷つくような言葉をたくさん使ってきてしまったと思っています。そのことを考えるだけで申し訳ない思いになりますし、自分に対しても悲しくなります。しかし、今後誰かを傷つけることを恐れて何も言わないのではなく、なんという表現が良いか、共同創造の中で確認しながら、そしてお互いに勇気をもって思ったことを差し出し合える、そんな関係を築いて進めていけたらと感じています。
東京大学コプロダクション研究チーム 宮本有紀