共同創造Co-production資料30 精神保健医療研究での共同創造

またまた研究の共同創造に関する文献です

Soklaridis, S., Harris, H., Shier, R. et al. A balancing act: navigating the nuances of co-production in mental health research. Res Involv Engagem 10, 30 (2024). https://doi.org/10.1186/s40900-024-00561-7
(バランスをとる行為:精神保健医療研究における共同創造のニュアンス)

これは公開されている論文で、カナダのリカバリーカレッジで実際に共同創造に携わっている人たちが執筆している論文です。
この研究では、まず、著者らはどのような立場なのかを表1で記載していて、自分はどんな背景をもって、どんな社会階級で、というようなことがそれぞれの言葉で記載されています。

そして、この論文では、本人たちの参加型アクションリサーチで、自身たちの共同創造における4つの価値観

1. Navigating power relations together
権力や力関係に共に関与する

2. Multi-directional learning
多方面からの学び

3. Slow and steady wins the race
ゆっくりと着実に

4. Connecting through vulnerability
弱さを通してつながる

について記載しています。

この論文は、精神保健医療研究での共同創造、とタイトルにあり、実際にこの方たちで共同研究に取り組む中で生み出された研究であるということも記載されていますが、これは研究に限らず、共同創造のプロセスどれにも共通することかもしれないと感じました。

共同創造を本気で実践するのは簡単とは言い切れないと思いますが、そのことも含め、共同創造の過程で発見したことについてこのように記載されていることは貴重なことだと思いました。また、著者らが自分たちは何者なのか、研究者や研究対象としてどのように互いに関わるかについて考え、それをこの表のような形で記載していることに感銘を受けました。質的研究では、研究者がどのような立場でどのような視点でその研究に携わったかを記載することが多いと思いますが、量的研究では研究者は客観的な立場(というのがあたかもあるかのように)を求められ、研究者のことが言及されることはほぼありません。しかし、実際には研究者の背景、考え方はその視点や発言に大きな影響を与えており、そのことを無自覚なままに観察することの危険についてもこの論文から気づかされました。
東京大学コプロダクションチーム 宮本有紀

リカバリーカレッジの文化祭が名古屋市で開催されました(2024/2/24)

2024年2月24日(土)に、リカバリーカレッジ文化祭といって、全国のリカバリーカレッジが集まる催しが愛知県名古屋市で開催されました。

この、リカバリーカレッジの文化祭、というのは、全国のリカバリーカレッジで集まってみんなでお互いの講座などに参加したり発表しあったりしましょうよ、ということで2022年に岡山で第一回が、2023年は久留米で第2回目が開催されていて、今回の名古屋が第3回目でした。
その前から、リカバリーカレッジに関する報告会や研修会に全国のリカバリーカレッジの仲間たちが集まったり、リカバリーカレッジのつどいなどを開催してきたのですが、「文化祭」と名付けた催しとなってから、各地のリカバリーカレッジが持ち回りで開催をするようになっています。

名古屋の文化祭のチラシです↓。文化のみち撞木館という、趣のある素敵な会場でした。

リカバリーカレッジ文化祭 in 名古屋

共同創造Co-production資料29 精神保健医療は経験した人々との対等なパートナーシップが必要

今回は研究論文ではなく、世界の精神科領域の医療者や研究者に広く読まれている学術誌の諭説の紹介です。

Fisher, H.L. (2024), The public mental health revolution must privilege lived experience voices and create alliances with affected communities. World Psychiatry, 23: 2-3. https://doi.org/10.1002/wps.21149

ここでは、

  • 「精神健康を保ったり、精神健康の改善するための施策の立案、実施、評価は、実際に精神的不調の経験をもつ人たちが、対等なパートナーシップで参加することが望ましい」
  • 「実際にその状態を経験した人たちが住民の精神健康を改善するような研究や施策を主導するようになることが理想である」
  • 「社会から疎外された人々がこのような対話に参加できるようになるためには、社会的・経済的な支援と柔軟性が必要であり、現在の社会を苦しいものにしている不平等を再生産しないために極めて重要である」
  • 「予防の取り組みがマイノリティのコミュニティと共同設計され、理想的には草の根組織や地域社会を基盤とする組織と協力して実施されるようにすることが極めて重要である」
  • 「 影響を受ける人々や地域社会が関与しなければ、提案されている公的な精神保健介入策の多くは失敗する運命にある」

といったことが記載されています。

これらのことは、リカバリーカレッジなどの共同創造に取り組んだ人から話を聞いたり、自分自身で取り組んだりしてみて、実感をもってその通りだと感じることばかりです。これまで、医療や研究の世界では、医療者や研究者の集めてきた知見が重視される傾向があったと思いますが、患者や当事者の声を聴くことの重要性、対等なパートナーシップの重要性について、このような学術誌の論説に掲載されるということには大きな意味があると感じました。これは、共同創造に触れた人たち、共同創造ではなかったとしても当事者の声に耳を傾けた人たちで、これは本当に重要なことだと実感する人たちが増え、そうしないでいる(当事者の声を取り入れずにいる)ことの危険性が実感され出したということでもあるのだろうなと感じます。
東京大学 コプロダクション研究チーム 宮本有紀

共同創造Co-production資料28 その状態の実体験を持つ人と専門職者との共同研究

共同創造は、さまざまな領域のさまざまな内容について実践することが可能であり、そして実際に取り組まれていることと思います。
保健医療福祉領域の研究についても、これまでは研究者・医療者が研究をする者、医療を提供する者の立場で実施し、発表されることがほとんどでしたが、最近では患者・利用者の方々が自身の声を保健医療福祉の学会等で発表されたり発信されることも増えています。
それに加え、近年では、少なくとも保健医療領域では、研究への市民患者参画が求められるようになってきており、研究を共同創造で行われることも増えてきました。

ここでは、World Psychiatryという精神医学領域の学術誌に掲載されている、その疾患状況を経験した人(患者としての体験のある人)と学術関係者(研究者)によって執筆された論文をご紹介させていただきます。

Fusar-Poli, P., Estradé, A., Stanghellini, G., Esposito, C.M., Rosfort, R., Mancini, M., Norman, P., Cullen, J., Adesina, M., Jimenez, G.B., da Cunha Lewin, C., Drah, E.A., Julien, M., Lamba, M., Mutura, E.M., Prawira, B., Sugianto, A., Teressa, J., White, L.A., Damiani, S., Vasconcelos, C., Bonoldi, I., Politi, P., Vieta, E., Radden, J., Fuchs, T., Ratcliffe, M. and Maj, M. (2023), The lived experience of depression: a bottom-up review co-written by experts by experience and academics. World Psychiatry, 22: 352-365. https://doi.org/10.1002/wps.21111
(実体験としてのうつ(うつの生きられた経験):経験による専門家と学者が共同で執筆したボトムアップレビュー)

Fusar-Poli, P., Estradé, A., Stanghellini, G., Venables, J., Onwumere, J., Messas, G., Gilardi, L., Nelson, B., Patel, V., Bonoldi, I., Aragona, M., Cabrera, A., Rico, J., Hoque, A., Otaiku, J., Hunter, N., Tamelini, M.G., Maschião, L.F., Puchivailo, M.C., Piedade, V.L., Kéri, P., Kpodo, L., Sunkel, C., Bao, J., Shiers, D., Kuipers, E., Arango, C. and Maj, M. (2022), The lived experience of psychosis: a bottom-up review co-written by experts by experience and academics. World Psychiatry, 21: 168-188. https://doi.org/10.1002/wps.20959
(実体験としてのサイコーシス(サイコーシスの生きられた体験):経験による専門家と学者が共同で執筆したボトムアップレビュー)

上記研究は、それぞれうつについてとサイコーシス(精神病様体験)について、実際に自身の生活の中でその状態を生きた方たちやその家族、学者でさまざまな年齢層、性別、文化的背景をもつ人々が参加して執筆されました。(最初の3人の著者が同じなので同じ文献のように見えてしまうかもしれませんが、別々の論文です)

たとえば、うつの体験についての研究では、患者利用者経験のある人、その家族、学者などにより構成された研究チームで、うつ状態について自身の言葉で語っている質的研究を集め、そこで記載されている内容からうつ状態の主観的世界、社会的・文化的文脈の中でのうつ状態の経験、うつからの回復の経験に分類されました。
その後、上記により分類された内容を、この研究チームに属していないより広い患者・家族ネットワークに見てもらい、特に中低所得国や性的、社会的マイノリティの方たちも含まれるようにしながら、フィードバックを得てさらに豊かな内容になりました。そして、それらをグーグルドライブで共有しながら多くの参加を得て共同執筆された論文で、執筆に参加された方々は共著者となっています。

このように、保健医療の領域で、患者や市民と共に研究をする取り組みは増えています。日本でも、たとえば国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)という研究開発と研究環境整備の組織から助成を受けた研究事業で患者市民参画(PPI)に取り組んだ事例を紹介したりしています。
https://www.amed.go.jp/ppi/ppipractice.html

 

従来は、医療者や学者が疾患や症状について解説をした文章が教科書となり、医療者への教育に使われてきたと思います。もちろん、医療者から見える状態像が記載されており、それが間違いであるわけではありませんが、この論文のように実体験をした本人たちの語りがまとめられること、そして、その実体験のある人たちが執筆の過程に参加することにより、そのまとめ方や表現のされ方が医療者・学者視点に偏ることなく記載され、その状態を経験している人にとって大切なことが発信されやすくなるということで、とても意義のあることだと思いました。
東京大学コプロダクション研究チーム 宮本有紀

共同創造Co-production資料27 共同創造の測定と評価 その3

コプロダクション(共同創造)の資料の紹介で、学術論文で、Measurement and outcomes of co-production in health and social care: a systematic review of empirical studies(医療と社会福祉における共同創造の測定と成果:システマティックレビュー) の内容を、できるだけわかりやすく紹介することに挑戦してみることの続き(その3)です。

書誌情報:
Nordin A, Kjellstrom S, Robert G, et alMeasurement and outcomes of co-production in health and social care: a systematic review of empirical studiesBMJ Open 2023;13:e073808. doi: 10.1136/bmjopen-2023-073808
https://bmjopen.bmj.com/content/13/9/e073808.long
公開されている論文なので、どなたでも読めますし、Google 翻訳などを用いて日本語にして読むことができると思います。

今回は、結果の内容の続きです。

共同創造の測定に何を用いているか?
質的研究では測定尺度は使われていません。
量的研究で無作為化比較試験では、その介入に関連した健康側面に関する尺度と、その介入そのものを評価する尺度が使われていました。
量的研究で無作為化比較試験ではない研究では、それぞれの研究に関連して測定尺度が独自に作られており、そのほかその共同創造介入に関連した健康側面に関する測定尺度も用いられていました。
介入研究ではない記述的な量的研究では、それぞれの共同創造介入に関連した測定尺度が用いられ、そのうち一つは共同創造の過程での経験を測定するのに、その過程の交流の生産性に関する認識を測定するRelational Coordination Scale (RCS) を用いていました。
質的研究と量的研究の混合研究であった25件では、さまざまな尺度が用いられていました。すでに妥当性が確認された尺度が用いられているもの、先行研究で用いられた尺度と用いているもの、独自に作った尺度を用いているものがありました。研究によっては、共同創造過程に参加する患者利用者の経験を測定する調査票を用いたり、オーストラリアの研究で、オーストラリアの国立衛生医学研究評議会(National Health and Medical Research Council’s (NHMRC))の原則にどれくらいのっとった介入であったかを測定しているものなどがありました。

共同創造の成果として何が報告されているか?
さまざまなものが共同創造の成果として報告されていました。
質的研究では、実行された変革、優先事項の確認、合意、作られたツールや、持続可能性などについて述べられていました。
無作為化比較試験では、患者利用者を対象とした2つの研究で共同創造介入がよい結果であったことが報告され、自傷行為の減少と精神的不調の減少が示され、共同創造によって開発されたデジタルツールを継続して使用したいと望んでいました。
量的研究と質的研究による混合研究では、多様な成果が報告されていました。それらは4つに大別することができ、共同創造の成果とその過程、うまくいった要因、参加者への影響、学習成果でした。
成果とその過程は、たとえばケアの改善、社会的ネットワークが強くなる、などでした。
成功要因として挙げてあったものは、参加すること、緊密な関わりなどが当てられていました。
参加者への影響としては、ウェルビーイングの向上、敬意と自信、エンパワメントなどがありました。
学習成果に関しては、共同創造により学習成果が得られ、そこで学んだ原則というのがその後の向上や共同創造の発展に価値あるものとして述べられていました。

実践への示唆
この文献検討を行ったことでわかったこととして、共同創造の成果を測定する尺度はなく、推奨できるようなものもなかった。
著者らは、共同創造の過程で、プロジェクトの目的達成のためだけに共同創造が使われてしまい、共同創造の民主的原則が顧みられなかったり、参加者はその過程でよい経験をしていると感じていてもプロジェクトの目的が達成されていないというようなことのバランスを取ることに言及しています。

結論
結論として、共同創造に関する研究は、さまざまな測定方法を用いており、共同創造のよい成果が報告されていた。
この文献検討から、今後、共同創造過程におけるアウトプット、共同創造に参加することの経験、共同創造の成果の3つの観点から測定されるべきであると考えられる。

この文献検討論文は重要な論文だと思いつつ、内容が少し難解だったり、読むことに根気がいる部分などがありました。ここでご紹介しようと思わなければ、読み通せなかったかもしれません。お付き合いくださった方(がいるとすれば)、ありがとうございました。
私としては、最後の結論に記載されていた、共同創造過程におけるアウトプット(共同創造によって作り出されたもの)、共同創造に参加することの経験、共同創造の成果(共同創造によって作り出されたものからもたらされる成果)の3つの観点から測定されるべきである、ということはとても納得のいくことでした。
東京大学コプロダクション研究チーム 宮本有紀

共同創造Co-production資料27 共同創造の測定と評価 その2

コプロダクション(共同創造)の資料の紹介で、学術論文で、Measurement and outcomes of co-production in health and social care: a systematic review of empirical studies(医療と社会福祉における共同創造の測定と成果:システマティックレビュー) の内容を、できるだけわかりやすく紹介することに挑戦してみることの続きです。

書誌情報:
Nordin A, Kjellstrom S, Robert G, et alMeasurement and outcomes of co-production in health and social care: a systematic review of empirical studiesBMJ Open 2023;13:e073808. doi: 10.1136/bmjopen-2023-073808
https://bmjopen.bmj.com/content/13/9/e073808.long
公開されている論文なので、どなたでも読めますし、Google 翻訳などを用いて日本語にして読むことができると思います。

今回は、結果の内容に入っていきたいと思います。

この文献検討でわかったことの抜粋
この研究では、実際に行われた共同創造のプロジェクトに関する研究43本が扱われています。
ここで文献検討の対象となった論文は、2012年から2019年の3月までに出版されたものでした。
そのうち23本が英国、6本がオーストラリアの研究で、そのほかの国を含め12か国からの研究でした。
これら43本の保健医療福祉に関する共同創造研究のうち、精神保健領域の文献が14本(英国から9件)と最も多い領域でした。

この論文(文献検討の結果を報告しているこの論文)内では、サービスを利用する人を指す言葉として「user」という言葉が使われており、このuserを私的に(専門職の責任としてではなく)サポートしたり助けたりしている人を「informal caregiver」、サービスを提供している人たちのことを「providers」として記すこととしたとの記載がありました。
(共同創造のことを記載するときに、誰のことをなんと呼ぶかはいつも迷うところなので、こういった記載は重要と思いました。)

これら43本の論文の目的は何であったか?
共同創造プロジェクトやその研究を開始した人は? プロジェクトや研究をuserからはじめたというものはまれでした。
質的研究で記載されていた目的:
サービス利用者とのコミュニケーションを向上する、サービスの改革を共に行いたい、保健医療福祉への患者利用者の参画を高め、利用者と支援者がそのサービスや質についてどのように認識しているかを評価したい
量的研究のうち無作為化比較研究:
どの研究も共同創造により行われた介入のアウトカム(成果)を評価することが目的で、2つの研究はデジタルツールを用いてよりタイミングよく、よりよいサポートを提供したいというもの、1つの研究は、研究への患者と市民の参画を増やしたいというもの、また別のものは共同創造介入を通じてスタッフの行動を改善しケアをより良いものにしたいというものでした。
量的研究で無作為化比較研究ではないもの:
3本とも、サービス利用者がそのサービスを利用する経験をよりよいものにしたい
量的記述的研究:
救急医療の利用を減らしたい、スタッフの態度を向上させるために共同創造についてe-ラーニングで学ぶことの評価、患者の健康と自己管理技術の向上のための共同創造によりつくられたプログラムの評価、ケアの質のデータを通じてケアを向上する、それらの過程を通じて共同創造を増やす、共同創造の関係を向上させることによってケアの過程を発展させる、保健医療福祉を統合し患者利用者のエンパワメントを向上することで共同創造の過程と患者アウトカムを向上させたい
質的研究と量的研究の混合研究:
不利なコミュニティをエンパワーする、暴力の発生率が高いところで共同創造を査定する、共同創造に参加することの経験を評価する、共同計画が患者の体験やサービスそのものを向上するかの評価、すでに行われている共同創造の過程をさらに向上させる、などを目的としていた。そして多くの混合研究の目的は、共同創造による情報提供やサービスによる成果の評価であった。
共同創造の成果としては、有効性と向上の度合いが主なものでした。そのほか、その共同創造によってつくられたものの受容性や実現可能性を測定していたり、それを利用してみての経験を評価していました。また、患者・利用者により主導された共同創造介入を評価することを目的としているものもありました。25の混合研究のうち、患者利用者から始められた研究であると報告しているものは1件のみでした。

共同創造についての研究にも、さまざまな目的があって、共同創造の過程に関心のあるもの、共同創造によってつくられるもの(サービスなど)の有効性を評価するもの、さまざまだなと思いました。
東京大学コプロダクション研究チーム 宮本有紀

共同創造Co-production資料27 共同創造の測定と評価 その1

コプロダクション(共同創造)の資料の紹介です。今回は、学術論文で、Measurement and outcomes of co-production in health and social care: a systematic review of empirical studies(医療と社会福祉における共同創造の測定と成果:システマティックレビュー) の内容を、できるだけわかりやすく紹介することに挑戦してみたいと思います。

書誌情報は以下の通りです
Nordin A, Kjellstrom S, Robert G, et alMeasurement and outcomes of co-production in health and social care: a systematic review of empirical studiesBMJ Open 2023;13:e073808. doi: 10.1136/bmjopen-2023-073808
https://bmjopen.bmj.com/content/13/9/e073808.long
公開されている論文なので、どなたでも読めますし、Google 翻訳などを用いて日本語にして読むことができると思います。

研究の概要(宮本の勝手な補足も含まれています)
背景
この研究が行われた背景としては、共同創造は医療や福祉の質を向上させる効果的な方法として推進されており、また研究もなされているものの、共同創造の成果の測定方法はさまざまであり、さまざまな共同創造の取り組みの全体的な成果をまとめて話すことが難しいということがあります。
目的
そこで、この研究では、医療と福祉の領域において行われた共同創造によるプロジェクトの研究では、その成果をどのように測定されているかを、たくさんの研究を読んでまとめました。
方法
たくさんの文献を読み、それをまとめることを学術論文では文献検討(review=レビュー)を行う、と表現しますが、この研究は、文献検討の中でも、スコーピングレビューという方法(体系的に文献を検索し、設定した基準に合った文献を全て読んでまとめる方法のうちの一つ)をとりました。
学術論文を検索するデータベースがいくつもあるのですが、そのうちのいくつかのデータベースを用いて、共同創造、共同制作といった概念を扱い、公共サービスの文脈で行われていた研究を検索し、その共同創造の過程や成果が掲載されている論文を調べました。
結果
その結果、43本の共同創造を実際に行って評価した研究が検討されました。これらの研究は、12か国で行われており、その半分以上は英国で行われた研究でした。6割の研究は、混合研究(量的研究と質的研究を組み合わせた研究)でした。それぞれの研究で共同創造の成果を測る尺度を独自に開発して用いられていたため、研究同士の比較や同じ観点での成果の蓄積はなかなかできませんでした。
全体的には、これらの研究では共同創造による成果は肯定的な結果でした。共同創造はポジティブな経験としてとらえられ、重要な学びがあったと報告されています。
結論
共同創造を測定するための共通の手法がないことは問題である。共同創造は、共同創造の過程から得られるもの、共同創造に参加する経験、共同創造の成果の3つの観点から測定されるべきものと考えられます。

この論文の内容を何回かに分けてご紹介したいと思います。

私たち自身が共同創造の研究に取り組んでおり、この論文は大切な論文なのではないかとコプロダクション研究チームのメンバーが紹介してくれました。
上記の研究の結論に記載されている3つの観点のうち、私は主に、共同創造の過程で生み出されるものや、そこに参加する人が共同創造の過程で学ぶこと(お互いについての理解が深まり、そのプロジェクトを提供する相手への理解や関心が高まり、そのプロジェクトへのやる気も高まる、など)に特に関心があるのだなと気づきました。
東京大学コプロダクション研究チーム 宮本有紀

Ksenija Kadicさん(Recovery College C & I)との交流会20230831

Ksenija Kadicさん(クセーニャ・カディックさん:ロンドンのリカバリーカレッジCamden & Islingtonのマネージャー)と日本のリカバリーカレッジに関わる皆さんでの交流会を2023年8月31日にZOOMで開催しました。
Ksenijaさんがお休みに日本に来日されるとのことでご紹介いただき(ゆかさんご紹介ありがとうございます!)、日本のリカバリーカレッジの運営にかかわるみなさんと交流する機会をいただきました。 全国のリカバリーカレッジに関わっている皆さんが参加できるよう、この交流会はZOOMで企画しました。
(今回の催しは主にリカバリーカレッジネットワーク(リカバリーカレッジの運営に関わっている方たちのネットワーク)の仲間たちにお声かけしました。)

クセーニャさんのこと、リカバリーカレッジC&Iのこと、トレーナー(チューターとも。講座講師)のための研修について、コ・プロダクション(共同創造)とリカバリーや、リカバリーカレッジの重要な柱であるHope、Opportunity、Controlについてなど、たくさんお話ししていただき、盛りだくさんであっという間の2時間でした。
リカバリーカレッジについて、リカバリーについて、自分の経験をシェアすることについて、いろいろ考えました。
Ksenijaさん、ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。

写真にうつってもよい、撮った写真はSNSで使用してもよいと思う方だけで撮影した写真です↓
ZOOM Mtg

Ksenija Kadic (Manager of Camden & Islington, a recovery college in London) and people involved with recovery colleges in Japan had a social event at ZOOM on August 31, 2023.
Ksenija was visiting Japan for her vacation (thank you to Yuka for connecting us!), and we had the opportunity to meet with people involved in managing recovery colleges in Japan. We organized this meeting through ZOOM so that anyone from all over the country could participate.
(I mainly invited our colleagues in the Recovery College Network, a network of people managing recovery colleges, to participate.)

We heard Ksenija’s introduction, the Recovery College C&I, and courses and trainers (also known as tutors). It was an inspiring and fast two hours, as we talked a lot about the training for trainers, co-production and recovery, and the essential pillars of recovery college: Hope, Opportunity, and Control.
I thought a lot about what recovery colleges are, about recovery, and about sharing experiences.
Thank you so much to Ksenija and everyone who attended.

The photo was taken only with those willing to be photographed and to use the snap on social networking sites.

リカバリーカレッジ資料 08: オンライン講座の利点と困難

リカバリーカレッジに関する文献リストその8です。

宮本有紀, ゆうこりん, かけるん, 吉岡洋, 馬渡春彦, 高田和則, 藤澤希美, 黒田文, 青木裕史, ちはるん, 青木典子. リカバリカレッジにおけるオンラインの活用. こころの健康. 2022;37(2):37-42.

https://mol.medicalonline.jp/library/journal/abstract?GoodsID=de0kokor/2022/003702/008&name=0037-0042j

リカバリーカレッジは、対面で集まる形式で英国ではじまり、日本でもそのように広がっていましたが、コロナ禍で多くのカレッジがオンラインを活用した講座を開催するようになりました。リカバリーカレッジでどのようにオンラインを活用していたかを、全国のさまざまなリカバリーカレッジの関係者である仲間たちとまとめたものです。

こちらは、「こころの健康」という雑誌の、SNS・Webメディアとメンタルヘルスの特集に掲載していただきました。

皆でまとめるにあたり、オンラインで開催してよかった点やストレングスについてと、対面講座のときにはなかった困難などをどんどん挙げてもらい、それらをまとめました。この文章の中では、①受講者にとってのオンライン講座の利点、②リカバリーカレッジを運営・提供する側にとってのオンライン講座やオンライン活用の利点、③オンライン講座で困る点とそれに対する工夫を、それぞれ表にまとめました。

オンライン講座での困難もたくさんあがっていたのですが、そのどれに対しても、各カレッジで、困難を減らしたり防ぐための具体的な工夫がなされていて、それらを皆で共有することができて、まとめていてとても楽しかったです。

リカバリーカレッジ資料 07: 支援職に与える影響の文献検討

リカバリーカレッジに関する文献リストその7です。

清家 庸佑, 川口 敬之, 小原 一葉 (2023). リカバリーカレッジへの参加が支援職に与える影響について—スコーピングレビュー. 精神医学,  65(4): 489-498. https://doi.org/10.11477/mf.1405206897

タイトルにある通り、リカバリーカレッジへの参加が支援職に与える影響についての文献検討です。レビュー対象となった10本の文献の要約など、こうやってまとまっているとありがたいなぁと感じました。著者の皆さんは個人的にも存じ上げていて皆さん素敵な方々です!