共同創造 Co-production 資料04: NHS「co-productionモデル」のリーフレット(5つの価値観、7つのステップ)

今回は、英国の“NHS(National Health Service)England”(国民保健サービス)のwebサイトで公開されている「co-productionモデル」についてのリーフレットをご紹介いたします。
https://www.england.nhs.uk/participation/resources/co-production-resources/
(アクセス:2020年3月19日)
(NHS Englandは、イングランドの公的医療サービスを担う組織です。)

このリーフレットでは、co-productionを実現していくための「5つの価値観」や「7つのステップ」が紹介されています。

「5つの価値観」としては…
◇全員がco-productionを体得し、理解し、支えていくこと
◇開かれた公正な文化
◇権力を市民と分かち合い、決断を市民と共に行うよう、最大限努めること
◇分かりやすい言葉による明快なコミュニケーション
◇誰もが価値を認められ尊重される文化
といった5点が挙げられています。

さらに「7つのステップ」として…
① リーダーからco-productionを支持するという合意を得る。
② ヘルスケアサービスの利用者や、介護者、地域の人々を、開かれた公正な方法で募集する。その際、疎外されがちな集団を含めるために、確かな対策を講じる。
③ 人々がそれぞれに成す貢献を認め、それに報いるためのシステムを整備する。
④ co-productionが真のインパクトをもたらしうる領域を見定め、プロジェクトをデザインする最も早期の段階から市民をとりこんでいく。
⑤ co-productionが「自分たちのやりかた」だと言えるようになるまで、co-productionを行動計画に組み込んでいく
⑥ 全員がco-productionとは何かを理解しそれがどのように起こるかを分かるようになるまで、スタッフや市民をトレーニングし育てていく。
⑦ 定期的に進展を振り返り報告する。「誰かに言われてする」ではなく「自ら言ったことを実現する」という状態を目指して。
と記されています。
co-productionを実現していくためのヒントのひとつとして、ご紹介してみました。

東京大学 コプロダクション研究チーム 小川亮
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研究チームの印象に残ったこと・自由な感想

共同創造 Co-production 資料03: INVOLVE「研究におけるco-production(共同創造)についてのガイダンス」

今回は、英国の“INVOLVE”という団体により公開された「研究におけるco-production(共同創造)についてのガイダンス」(Guidance on co-producing a research project)をご紹介いたします。
https://www.invo.org.uk/posttypepublication/guidance-on-co-producing-a-research-project/
(アクセス:2020年2月20日)

INVOLVEは、1996年にイギリスの国立衛生研究所(the National Institute for Health Research)により設立され、医療保健福祉領域における市民参画を支援することを目的としています。

2018年2月に公開されたこのガイダンスでは、医療保健福祉領域の「研究」がテーマとされており、研究を共同創造していくうえで大切なこと、そのための方法、乗り越えるべき課題などが紹介されています。

たとえば冒頭には…
「研究を共同創造することは、研究者、臨床家、市民が、プロジェクトの初めから終わりまで(知見を生み出すというところまで含めて)、権限や責任を分かち合いながら力を合わせて取り組んでいくことである」
…と記されています。

大切な原則としては…
・権限を分かち合う
・あらゆる視点や技能を含みこむ
・共に働く仲間の知に、敬意を払い価値を置く-誰もが等しく大切である
・互恵性-共に働く仲間同士、誰もが互いに得るものがある
・関係を築き維持する-共通理解や合意を形成し、役割や責任を明確にすることが必要となる
…といった点が挙げられていました。

研究における共同創造を考え実践していくうえでの貴重な資料のひとつとして、ご紹介させていただきました。

東京大学 コプロダクション研究チーム 小川亮
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研究チームの印象に残ったこと・自由な感想

  • コプロダクションの資料は多数あるが、これは研究におけるコプロダクションを扱っている
  • 患者市民参画(Patient Public Involvement: PPI)研究と研究におけるコプロダクションの重なりを整理してみたい
  • Respecting and valuing the knowledge of all those working together on the research という考えが好き

共同創造 Co-production 資料02: 「人々や組織にとって、どんなよいことがあるのか」

共同創造;人々や組織にとって、どんなよいことがあるのか
https://www.tnlcommunityfund.org.uk/insights/co-production
(アクセス:2020年1月15日)

The National Lottery Community Fund(英国の国営宝くじの収入により運営されている基金)のウェブサイトより(意訳)
※なお、訳については、 原文のままというよりは、読んでぱっとイメージが湧くように、文意を汲んでかなり大胆に意訳した箇所も多いですので、正確なニュアンスについては原文をご参照いただければ幸いです。

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共同創造についての知恵や教訓
◇共同創造は大変、でも、それだけの価値がある
・時間がかかるしお金もかかる
単に現実的なこと(全員の予定が合う日はずいぶん先になってしまう…といったような)だけではなくて、
共同創造に関わるひとたちの間の信頼関係を築くことにこそ、なによりも時間がかかる。

・お金や時間だけのことでもない
共同創造にふさわしい心構えで臨むことこそが、なにより大事
確立された「今までやり方」の枠を飛び出していくこともありうる、というような

◇共同創造すると…それぞれの立場のひとたちに、それぞれよいことがある
・何らかの困難の経験を持つ人(精神的不調、等々)が、共同創造に「参加する」と…
自分で自分の価値を認められるようになったり、自分を信頼できるようになったりするかもしれない
さまざまな技能や経験を手にすることもできる
ピアのネットワークや支援からも多くのものを得ることができる
新たな「使命感」や「目的意識」を得ることだってある

・サービスを運営するスタッフについては…
共同創造は、スタッフのやる気を高めうる
仕事への情熱に再び火を灯すことだってある

・サービス自体は、共同創造によって…
各々の利用者によりぴったりフィットしたもの、アクセスしやすいものになる
ともすればお堅い感じになってしまうサービスが、より人間味豊かなものになる

◇どうすれば共同創造をうまくすすめられるのだろうか
「うまくいく共同創造」といったような、あらかじめつくられた「青写真」はない
それは常に現在進行形のプロセスである
つまり、常にわが身を省みながら取り組み続ける必要がある

心に留めておくべき重要なこと:
・共同創造は、どんな状況で行うか、誰と一緒に行うかによって、まったく違ったものになる、ということを理解しておく
・新たなアイデアに心を開く
力や責任を分かち合う心づもりをしておく
「自分と違う意見が出る」ことを喜んで受け入れる(あるいはまた、自ら進んで「違う意見を出す」)
・なにが期待できるか、どこまでが限界なのかについて、正直かつ率直でいる
・プロジェクトのすみからすみまでに、共同創造の精神を深く植えつける
共同創造をうまくやっていくのは「全員の役割」だと確かめておく
・ずっと同じ人だけに頼らないようにする、顔ぶれを新鮮に保ち、新たな声を歓迎する
・共同創造は1回限り/その場限りのものではない、と心しておく
プロジェクトの進行とともに進化していくし、進みながら、間違え、学び、改善していく、そのための心の準備をしておく
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訳:東京大学 コプロダクション研究チーム 小川亮
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研究チームの印象に残ったこと・自由な感想

  • 「共同創造は大変、でも、それだけの価値がある」、それを疲れたときとかに思い出したい。
  • 「自分と違う意見を喜んで受け入れる」大事だけどなかなか思えない時もあるかも。だからこそ思い出すことが大切。
  • ずっと同じ人だけに頼らないようにする、というのは、自分は長くなってしまったら長く居座ってしまってはいけないかな、って思っちゃうかもしれない。
    多様な考えを確保するために、顔ぶれを入れ替えたり、というのを患者市民参画の考え方で読んだ。そういう意図もあるかも。
  • 「間違え、学び、改善していく、そのための心の準備を」 できなくて当然という覚悟でやっていて、はじめて違いも祝福できるかも。

共同創造 Co-production 資料01

共同創造(Co-production)の研究・情報収集をしています♪

【co-productionについての情報サイト】
◇ImROC
Top Ten Tipsもあり
https://imroc.org/resources/13-co-production-sharing-experiences-reflecting-learning/

◇Think Local Act Personal
Co-production
https://www.thinklocalactpersonal.org.uk/Browse/Co-production/
Ten Tips
https://www.thinklocalactpersonal.org.uk/Latest/Top-Ten-Tips-for-Co-production-One-page-profile-and-Easy-Read-version/

◇Social Care Institute for Excellence
scie.org.uk/publications/guides/guide51/what-is-coproduction/

◇INVOLVE
https://www.involve.org.uk/resources/methods/co-production

◇NHS England
https://www.england.nhs.uk/participation/resources/co-production-resources/

◇Scottish Co-Production Network
http://www.coproductionscotland.org.uk/learning/section

◇The National Lottery Community Fund
https://www.tnlcommunityfund.org.uk/insights/co-production

◇Boyle D, Harris M. The Challenge of Co-Production (nesta)
2009のdiscussion paper へのリンクあり
https://www.nesta.org.uk/report/the-challenge-of-co-production/

リカバリーカレッジ資料 05

リカバリーカレッジに関する文献リストその5です。

平出麗紗, 宮本有紀, 田尾有樹子 (2018). 元気回復行動プラン(Wellness Recovery Action Plan:WRAP)への参加が精神健康に困難を有する人のリカバリーに与える効果についての研究. 精神医学, 60(9): 1025-1035.
https://webview.isho.jp/journal/detail/pdf/10.11477/mf.1405205681
この研究は、リカバリー・カレッジの講座として実施された元気回復行動プラン(Wellness Recovery Action Plan: WRAP)クラスの参加者を対象にWRAPの有効性を検討した論文です。
リカバリーカレッジそのものを扱っているというわけではありませんが、「はじめに」でリカバリーカレッジのことに触れており、また、リカバリーカレッジの中での講座であることも考慮した調査となっています。

リカバリーカレッジ資料 04

リカバリーカレッジに関する文献リストその4です。

パーキンス レイチェル, レパー ジュリー, リナルディ マイルス,ブラウン ヘレン, 森田久美子[訳](2016). 翻訳 リカバリーカレッジ (山口忠利教授・矢澤圭介教授退職記念号) Recovery College. 人間の福祉 : 立正大学社会福祉学部紀要 (30), 99-113, 2016
http://hdl.handle.net/11266/6341

この文献は、英国ImROC (Implementing Recovery through Organisational Change)の発行する冊子↓
Rachel Perkins, Julie Repper, Miles Rinaldi and Helen Brown. Recovery College. Centre for Mental Health, 2012
を訳されたものです。

山田理絵(2016). イギリスのリカバリー・カレッジ。「患者」から、回復をデザインする「私」へ. 精神看護 19(2):182-184
https://doi.org/10.11477/mf.1689200209

2014年9月に英国でのワークショップに参加された山田さんの取材レポートです。山田さんは2016年と2018年の英国リカバリーカレッジ視察チームのメンバーでもありました。

山田理絵(2016). リカバリー概念再考 : 英国の精神科医療におけるRecovery College を例として. UTCP Uehiro Booklet. 12:pp.131 – 141, 2016-03-31
リカバリーの概念について、リカバリーカレッジを挙げながら論述されています。

リカバリーカレッジ資料 03

リカバリーカレッジに関する文献リストその3です。
英国の精神保健について、リカバリーカレッジについての助川先生の文献です。

助川征雄(2009).イギリス・ケンブリッジ州における精神障害者支援に関する経年的研究(1). 聖学院大学論叢 21(3), 201-216.
http://doi.org/10.15052/00000425
厳密には、こちらの文献は1977年から2008年までの支援について記載されておりリカバリーカレッジはまだ登場しないのですが、リカバリーカレッジが英国で広まっていく前の状況が記されていて重要なのでリストに挙げています。

助川征雄(2012).イギリス・ケンブリッジ州における精神障がい者支援に関する経年的研究(2)2009~2011年. 聖学院大学論叢 24(2), 65-78.
http://doi.org/10.15052/00000516
リカバリー理論について、特にImROC、リカバリーカレッジ、ピアサポートワーカーについて紹介されており、また、精神障がい者ケアラー(家族等介護者)支援の動向について記載されています。

助川征雄(2013).イギリス・ケンブリッジ州における精神障がい者支援に関する経年的研究(3)リカバリー・イノベーションとピアサポートワーカーの役割. 聖学院大学論叢 25(2), 73-90.
http://doi.org/10.15052/00000803
リカバリーイノベーションの実際とピアサポートワーカーの役割などについて実例と共に紹介されています。

助川征雄(2015).イギリス・ケンブリッジ州における精神障がい者支援に関する経年的研究(4)リカバリー・イノベーションの現状と将来展望. 聖学院大学論叢 27(2), 143-158.
http://doi.org/10.15052/00000857
2014年8月に行かれた英国での再リサーチ時の写真等と共にImROCやリカバリーカレッジの展開が紹介されています。

リカバリーカレッジ資料 02

リカバリーカレッジに関する文献リストその2です。

山本俊爾, 真嶋信二(2016). リカバリーカレッジとは: 当事者、家族、支援者の協働の理念の下の「学び合い」の可能性. 福祉労働. (151):113-115.
リカバリーカレッジについて、「リカバリーカレッジたちかわ」について、リカバリーカレッジの可能性について実践に基づいて記載されています。

千葉理恵, 宮本有紀, 山田理絵, 真嶋信二, 小川友季, 金原明子, 小林伸匡, 佐々木理恵, 真嶋順子(2017). リカバリーを支える精神看護のヒント:英国リカバリー・カレッジを訪問して. 精神科看護, 44(9): 51-55.
2016年11-12月の英国リカバリーカレッジ視察メンバーの報告記事です。

千葉理恵, 宮本有紀(2017). 教育モデルによる新たな精神保健サービス リカバリーカレッジ. 精リハ誌, 21(2): 196-202.
リカバリーカレッジの概要が紹介されています。

山本俊爾(2018). 水平な関係でつながること: リカバリーカレッジとCo-production. . 精神保健福祉. 49(2):184-186.
リカバリーカレッジたちかわの事務局長である山本さんがリカバリーカレッジに取り組む中で、その活動と協働について執筆されています。

リカバリーカレッジ資料 01

リカバリーカレッジに関する文献を集めているので、その備忘録といいますか、いくつかリストしておきたいと思います(網羅できているわけではありません)。

添田雅宏 (2015). イギリスのリカバリーカレッジ体験記. こころの元気+. 9(5):32-35.
添田さんの2014年8月のロンドンとケンブリッジの精神保健福祉先進地域の見学のご報告記事です。
リカバリーイノベーションプロジェクトとは、ピアワーカーとは、リカバリーカレッジとは、を写真と共に紹介されています。

添田雅宏 (2015). イギリスのリカバリーカレッジ体験記(続編). こころの元気+. 9(9):32-35.
上記体験記の続編です。リカバリーカレッジの拡大、リカバリーカレッジの特徴、リカバリーカレッジの学生のその後について紹介されています。

佐々木理恵 (2017). 学びからリカバリーに取り組む場 リカバリーカレッジを訪ねて. こころの元気+. 11(9):34-37.
佐々木さんの2016年11-12月のリカバリーカレッジ視察報告記事です。主にノッティンガムのリカバリーカレッジとImROCの紹介がなされていて、リカバリーカレッジとは、学びやリカバリーが促進される空間作りについて、ピアはこれまでの文化を存在であること、視察で感じたことが紹介されています。

佐々木理恵 (2018). ちょっと知りたい!第41回キーワード リカバリーカレッジ. こころの元気+. 12(7)
佐々木さんがリカバリーカレッジについて解説されています!

リカバリーカレッジの概要(精リハ誌2017年21巻2号)

リカバリーカレッジについて概観した文献(2016年の視察メンバーでもある千葉理恵さん主著者)が精神障害とリハビリテーション(精リハ誌)に掲載されました!
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千葉理恵, 宮本有紀.
教育モデルによる新たな精神保健サービス リカバリーカレッジ.
精リハ誌. 21(2), 196-202, 2017.
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