共同創造 Co-production 資料11: SCIE「社会福祉領域でのコプロダクション:コプロダクションとは何か、どのようにするか」平易版

共同創造(コプロダクション)資料のご紹介です。

資料に平易版(Easy Read)があるときは、それが一番私にとってはわかりやすく、とても気に入っている資料の一つとして、
Social Care Institute for Excellence (SCIE) による
「社会福祉領域でのコプロダクション:コプロダクションとは何か、どのようにするか」平易版Co-production in social care: What it isand how to do it (Easy read summary)
(アクセス:2020年12月5日)
をご紹介します。

共同創造(コプロダクション)についての説明をいくつか抜き出します:
共同創造(コプロダクション)とは、サービス提供者側とサービスを利用する人やその介護者がともに取り組むことを意味します。(p.1)

共同創造(コプロダクション)の基本の意味は、何かをするために共に取り組む、ということです。異なる視点や考えをもった人たちが、誰にとっても良いものとなるよう集まってとりくむことです。(p.3)

共同創造(コプロダクション)は、サービスを利用する人、介護者、そしてサービスを運用する人たちが対等な立場で集まります。対等とは、他の人よりも大事な人というのがいるわけではない(誰もが同じように大事な人である)ことを意味します。(p.4)

共同創造(コプロダクション)で大切なこと

  • サービス利用者、介護者、サービス提供者が皆で同じことのために一緒に取り組む
  • サービス利用者と介護者がもつ力(パワー)と統制権(コントロール)が増す
  • サービス利用者と介護者は、サービス側のすること全ての一員となる
  • サービス利用者と介護者は、その知識とそのできることがある、価値ある存在であることをサービス側は理解する
  • サービス側のためにしたことに対して何かを得る-謝礼を支払われたり、何かを無料でできたり、新しいことを学んだり
  • サービスがどのように行われるかについて、管理者よりも、サービス利用者や介護者と接して働くスタッフの発言力が増す

共同創造(コプロダクション)の原則

  1. 対等性(Equality)
    誰もが持ち寄るものがあり、誰かだけがとりわけ大切ということはない(皆が同じように大切)
  2. 多様性(Diversity)
    コプロダクションにおいて皆が参加できているように
  3. アクセス(Access)
    コプロダクションへの参加が、誰かにとっては難しいようなことはあってはならない
  4. 相互性(Reciprocity)
    コプロダクションに取り組むことにより皆がそれぞれ何かを得る。お金のこともあれば何かを無料でできるとか。友達ができる、誰かの役に立つことで気持ちが良いなども

などが大きな字で、絵と共に記されていました。

平易な言葉にすることで、表現しきれないことも出てきてしまうのだろうとは思いますが、より多くの人がその意味をつかむことができる、アクセスできるということはとても重要なことだと思いました。

東京大学 コプロダクション研究チーム 宮本有紀
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共同創造 Co-production 資料10: 市民と行政との協働【2】(NPOと協働する行政職員の8つの姿勢、行政と協働するNPOの8つの姿勢)

(※「市民と行政との協働【1】」から続きます。)
今回は、前回に引き続き、「市民と行政との協働」に関する資料をご紹介いたします。

前回お示しした東京都東村山市の協働マニュアルには、「協働の原則」以外にも、大切な考え方として「NPOと協働する行政職員の8つの姿勢」(NPO活動推進自治体ネットワーク 協働を進めるための行政職員の意識改革研究会編)が引用されておりました。

その内容は…

  1. 公共は「官」だけが担うのではなく、NPOや企業などさまざまな主体と共に担う意識を持つこと
  2. 協働とは特別なことではなく、チャレンジであり、失敗を恐れない意識を持つこと
  3.  ニーズは、現場に足を運び、当事者の生の声に耳を傾けてこそわかるという意識を持つこと
  4. 協働相手とは対等である。本音で語り合えてこそ、協働であるという意識を持つこと
  5. 協働の現場では、自らの責務として率先して行政内部で連携し相乗効果を得ること
  6. 協働には十分なコミュニケーションが必要であり、共感するには時間がかかるという意識を持つこと
  7. 情報は市民のものであり、市民のために活用してこそ価値がある
  8. 協働できない理由を探すのではなく、受益者のためにどうしたら実現できるのかを考えること
    …といったものとなっています。

上記の「NPOと協働する行政職員の8つの姿勢」の内容は、日本NPOセンターのwebサイトhttps://www.jnpoc.ne.jp/?page_id=10158にも記載されており、このページには、「行政と協働するNPOの8つの姿勢」(民間NPO支援センター・将来を展望する会 編)に関しても記されています。
また、後者については、https://www.jnpoc.ne.jp/?page_id=457にさらに詳しい説明が述べられています。

その「行政と協働するNPOの8つの姿勢」は…

  1. 市民の共感と参加を基本とする事業づくりの能力を持ち、それを通じて本当の市民自治を促進すること
  2. ミッションと協働事業の整合性を考え、事業を展開すること
  3. 行政に依存せず、精神的に独立していること
  4. 相互のシステムの違いを理解しつつ、解決の糸口を見出していく姿勢を持って努力すること
  5. NPOならではの関与によって協働事業の質を向上できるような専門性・特性をもつこと
  6. ルールの違いを乗り越えるための能力を備えておくこと
  7. 協働した結果は、市民の共有財産として広く積極的に知らせていくこと
  8. 契約にあたって、対等な立場で交渉する力をつけること
    …といった内容となっています。

これらの「8つの姿勢」も、「市民/NPO」を「当事者」に、「行政/官」を「専門職」になぞらえてみると、「保健医療領域における当事者と専門職の共同創造」に向けて多くの示唆を与えてくれる資料ではないかという思いから、ご紹介してみました。

東京大学 コプロダクション研究チーム 小川亮
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研究チームの印象に残ったこと・自由な感想:
単語を変えればそのままさまざまな領域で当てはまる感じ。
日本NPOセンターのNPOと共同する行政職員の8つの姿勢、行政と共同するNPOの8つの姿勢は、様々な地域・組織の沢山の人が参加して作られている。
日本語で作られているため読んでいてわかりやすくてよい。
コプロダクションへのヒントはほかの領域にもたくさんあるので、そういったところにもアンテナを広げていきたい。
コプロダクションとか共同創造以外の他の言葉(たとえばcollaboration, engagementなどいろいろ)を使っているところもたくさんあるのでもっと知りたい。

共同創造 Co-production 資料09: 市民と行政との協働【1】(東京都東村山市協働マニュアル)

前回ご紹介した書籍では、co-production(コ・プロダクション;共同創造)の源流が、公共サービス領域にあるという経緯が述べられておりました。
日本でも、それに通ずる試みとして、(「co-production」や「共同創造」ではなく「協働」という異なる用語が用いられてはおりますが、)「市民と行政との協働」が各所で実践されているようです。
例えば、試しにGoogleで「協働」と検索してみると、様々な自治体のwebサイトに「市民との協働」に関する記載が見出されます。
一例を挙げると、東京都東村山市では、「協働とは」「協働の原則とは」といった説明https://www.city.higashimurayama.tokyo.jp/kurashi/shiminkatsudo/suishin/index.html
に加え、「協働を進めるためのマニュアル -職員用実務編-」といった資料(↓ pdf)も公開されています。
https://www.city.higashimurayama.tokyo.jp/kurashi/shiminkatsudo/suishin/kyodo_manual.files/2018_kyodo-manual_syokuin.pdf

マニュアルでは、協働についての基本的な考え方に加え、協働事業の進め方や「協働事業ふりかえりシート」といったツールも紹介されているため、co-production(共同創造)で何らかの活動や事業を実践してみたい方にもご参考になるのではと考えています。

少しだけ内容をご紹介いたしますと、例えば「協働の原則」として…
「自主・自立の原則」
公共的な事業・サービスに対して、市民活動団体の自主性を尊重するとともに、お互いに依存していくのではなく、それぞれの責任において事業が展開できることを目指し、互いに自立した存在と認めることをいう。
「相互理解の原則」
それぞれの長所、短所、立場を十分に認識し、理解し、尊重しあうことをいう。
「対等の原則」
市民活動団体と行政は、上下の関係でなく、常に対等の立場であることをいう。
「目的共有の原則」
市民活動団体と行政は、公共的な事業・サービスの提供が市民の利益につながるという目的を共有することをいう。
「公開の原則」
市民活動団体と行政の関係が公開されることをいう。

…という5点が挙げられています。

こちらのブログで主に取り上げている「保健医療領域における当事者と専門職」との関係ではなく、「市民と行政」との関係にまつわる内容ですが、「市民活動団体」を「当事者」に、「行政」を「専門職」に置き換えて考えてみると、私たちにとっても大切なヒントがたくさん発見できる資料ではないかという視点から、ご紹介してみました。
(※「市民と行政との協働【2】」に続きます。)

東京大学 コプロダクション研究チーム 小川亮

共同創造 Co-production 資料08: 【書籍】コ・プロダクション:公共サービスへの新たな挑戦

続いて、日本の萌文社から出版されている「PHNブックレット18 コ・プロダクション:公共サービスへの新たな挑戦」という書籍をご紹介いたします。
http://www.hobunsya.com/books/phn_ks/#phn18
(アクセス:2020年10月15日)

こちらの書籍は、英国のNEF(The New Economics Foundation)とNesta(The National Endowment for Science, Technology and the Arts)という組織が共同で公表している
The Challenge of Co-Production」という文書
NEF:
https://neweconomics.org/2009/12/challenge-co-production
Nesta:
https://www.nesta.org.uk/report/the-challenge-of-co-production/
(アクセス:2020年10月15日)
の日本語訳を中心に構成されています。

(↑この文書は、世界各国から発信される共同創造にまつわる資料や論文等でたびたび引用されている、共同創造について考えるうえで基礎となる重要な文献です。)
コ・プロダクションが英国の公共サービスに取り入れられた経緯や、コ・プロダクションとはなにか、どのように効果を発揮するのか、といった内容が扱われており、背景知識として英国の公共サービスのありかたについても説明されています。
ちなみに本書では、コ・プロダクションの定義として…「コ・プロダクションとは、専門家とサービスを使う人々、その家族・近隣が、対等な相互関係の中で届けられる公共サービスを意味する。活動はこうしたやり方で共同制作され、サービスと地域の両方が、はるかに効果的に変化する」
…と記されています(39ページ)。

共同創造について日本語で読むことのできる数少ない貴重な書籍として、ご紹介いたしました。

東京大学 コプロダクション研究チーム 小川亮

 

共同創造 Co-production 資料07: Skills for Care 「Co-production in mental health」

Co-productionに関する資料や説明を少しずつ勉強しています。
今回は、英国の“Skills for Care”という社会福祉に関する組織のwebサイトで公開されている「Co-production in mental health」という資料をご紹介いたします。
https://www.skillsforcare.org.uk/Documents/Topics/Mental-health/Co-production-in-mental-health.pdf
(アクセス:2020年10月15日)

こちらの文書では、何がco-production(共同創造)の助けになったり、あるいは妨げになったりするのか、といった内容や、共同創造のためのヒント(Tips)が述べられており、記載されている内容は…
・共同創造の定義やモデル
・共同創造における関係性や組織文化、リーダーシップのありかたについて
・共同創造を実践するときの実務的な課題
…など、多岐に渡っています。

(各項の末尾には、青地に白抜きの文字で「まとめ」的な内容が記された構成となっているので、その部分だけ飛ばし飛ばしに読むだけでも、何らかの発見があるかもしれません。)

ちなみに「共同創造のヒント」としては…
意訳:
1. どこかから始めなければならない:あなたにとって実用的な共同創造の定義を見つけ、飛び込もう
2. 共同創造の原則をいつも中心に据えよう
3. 共同創造が大変な作業であることを認識しよう
4. 責任を分かち合おう
5. 共同創造によって「できること」と「できないこと」について誠実であろう
6. 物語やデータ、ビジネスモデルを通して、共同創造がもたらす恩恵を実際に示そう
…といった内容が記されています。
実際に共同創造を行った事例に関するケーススタディや、そこに関わった人々の生の声も多数含まれているので、共同創造の現場の実情をうかがい知ることのできる貴重な資料のひとつとしてご紹介いたしました。

東京大学 コプロダクション研究チーム 小川亮

リカバリーカレッジ資料 06

リカバリーカレッジに関する文献リストその6です。

武田 宏 (2020). ロンドン南西リカバリーカレッジのカリキュラム. 医療・福祉研究, 28: 85-91.
http://ihmk.sakura.ne.jp/mokuji/mokuji.htm

こちらは、医療・福祉研究の最前線報告、ということで、ロンドン南西リカバリーカレッジ(South West London Recovery College)のカリキュラムについて、一部講座のシラバスの紹介と共に紹介されています。
著者の武田様から教えていただきました。武田様、どうもありがとうございました!

リカバリーカレッジ資料 05

リカバリーカレッジに関する文献リストその5です。

平出麗紗, 宮本有紀, 田尾有樹子 (2018). 元気回復行動プラン(Wellness Recovery Action Plan:WRAP)への参加が精神健康に困難を有する人のリカバリーに与える効果についての研究. 精神医学, 60(9): 1025-1035.
https://webview.isho.jp/journal/detail/pdf/10.11477/mf.1405205681
この研究は、リカバリー・カレッジの講座として実施された元気回復行動プラン(Wellness Recovery Action Plan: WRAP)クラスの参加者を対象にWRAPの有効性を検討した論文です。
リカバリーカレッジそのものを扱っているというわけではありませんが、「はじめに」でリカバリーカレッジのことに触れており、また、リカバリーカレッジの中での講座であることも考慮した調査となっています。

リカバリーカレッジ資料 04

リカバリーカレッジに関する文献リストその4です。

パーキンス レイチェル, レパー ジュリー, リナルディ マイルス,ブラウン ヘレン, 森田久美子[訳](2016). 翻訳 リカバリーカレッジ (山口忠利教授・矢澤圭介教授退職記念号) Recovery College. 人間の福祉 : 立正大学社会福祉学部紀要 (30), 99-113, 2016
http://hdl.handle.net/11266/6341

この文献は、英国ImROC (Implementing Recovery through Organisational Change)の発行する冊子↓
Rachel Perkins, Julie Repper, Miles Rinaldi and Helen Brown. Recovery College. Centre for Mental Health, 2012
を訳されたものです。

山田理絵(2016). イギリスのリカバリー・カレッジ。「患者」から、回復をデザインする「私」へ. 精神看護 19(2):182-184
https://doi.org/10.11477/mf.1689200209

2014年9月に英国でのワークショップに参加された山田さんの取材レポートです。山田さんは2016年と2018年の英国リカバリーカレッジ視察チームのメンバーでもありました。

山田理絵(2016). リカバリー概念再考 : 英国の精神科医療におけるRecovery College を例として. UTCP Uehiro Booklet. 12:pp.131 – 141, 2016-03-31
リカバリーの概念について、リカバリーカレッジを挙げながら論述されています。

リカバリーカレッジ資料 03

リカバリーカレッジに関する文献リストその3です。
英国の精神保健について、リカバリーカレッジについての助川先生の文献です。

助川征雄(2009).イギリス・ケンブリッジ州における精神障害者支援に関する経年的研究(1). 聖学院大学論叢 21(3), 201-216.
http://doi.org/10.15052/00000425
厳密には、こちらの文献は1977年から2008年までの支援について記載されておりリカバリーカレッジはまだ登場しないのですが、リカバリーカレッジが英国で広まっていく前の状況が記されていて重要なのでリストに挙げています。

助川征雄(2012).イギリス・ケンブリッジ州における精神障がい者支援に関する経年的研究(2)2009~2011年. 聖学院大学論叢 24(2), 65-78.
http://doi.org/10.15052/00000516
リカバリー理論について、特にImROC、リカバリーカレッジ、ピアサポートワーカーについて紹介されており、また、精神障がい者ケアラー(家族等介護者)支援の動向について記載されています。

助川征雄(2013).イギリス・ケンブリッジ州における精神障がい者支援に関する経年的研究(3)リカバリー・イノベーションとピアサポートワーカーの役割. 聖学院大学論叢 25(2), 73-90.
http://doi.org/10.15052/00000803
リカバリーイノベーションの実際とピアサポートワーカーの役割などについて実例と共に紹介されています。

助川征雄(2015).イギリス・ケンブリッジ州における精神障がい者支援に関する経年的研究(4)リカバリー・イノベーションの現状と将来展望. 聖学院大学論叢 27(2), 143-158.
http://doi.org/10.15052/00000857
2014年8月に行かれた英国での再リサーチ時の写真等と共にImROCやリカバリーカレッジの展開が紹介されています。

リカバリーカレッジ資料 02

リカバリーカレッジに関する文献リストその2です。

山本俊爾, 真嶋信二(2016). リカバリーカレッジとは: 当事者、家族、支援者の協働の理念の下の「学び合い」の可能性. 福祉労働. (151):113-115.
リカバリーカレッジについて、「リカバリーカレッジたちかわ」について、リカバリーカレッジの可能性について実践に基づいて記載されています。

千葉理恵, 宮本有紀, 山田理絵, 真嶋信二, 小川友季, 金原明子, 小林伸匡, 佐々木理恵, 真嶋順子(2017). リカバリーを支える精神看護のヒント:英国リカバリー・カレッジを訪問して. 精神科看護, 44(9): 51-55.
2016年11-12月の英国リカバリーカレッジ視察メンバーの報告記事です。

千葉理恵, 宮本有紀(2017). 教育モデルによる新たな精神保健サービス リカバリーカレッジ. 精リハ誌, 21(2): 196-202.
リカバリーカレッジの概要が紹介されています。

山本俊爾(2018). 水平な関係でつながること: リカバリーカレッジとCo-production. . 精神保健福祉. 49(2):184-186.
リカバリーカレッジたちかわの事務局長である山本さんがリカバリーカレッジに取り組む中で、その活動と協働について執筆されています。