共同創造Co-production資料23: SCIE What it is and how to do it 2022

共同創造の資料でしょっちゅうsocial care institute for excellence (SCIE) を見ています。
2022年の7月に更新された”Co-production: what it is and how to do it” https://www.scie.org.uk/co-production/what-how について自分のメモを残しておきたいと思います。
(この資料は、全てウェブ上に記載されていて、PDF(21ページ)で欲しい人はSCIEに登録するとダウンロードできるものです)

以下はメモと感想です。

このガイドは誰のため?
managers and commissioners (管理者とコミッショナー)
frontline practitioners (実践者)
people who draw on care and support (ケアやサポートを利用する人)

とあります。

英国の資料を見ていると、「コミッショナー(委託者)」という表現が出てきて、最初はイメージがつかめなくて、コミッショナーと書いてあるところを読み飛ばしたりしていたのですが、今の自分の理解では、コミッショナーというのは、医療や福祉の施策・政策を考えたり、医療福祉施設に指示を出したり規制をしたりする人達(日本で言うと、自治体とか厚労省とかにあたるのかな)となんとなく考えています。(あくまでも私のイメージであって、違うかもしれません)

コプロダクションのガイドは様々なウェブサイトに掲載されているのですが、たとえば患者や市民の立場で情報を探しているときに、政策立案者向けの資料とかを読むよりは、市民向け、とか、そういった想定している読者が最初に書いてあると、探す情報がみつけやすいのだなと思いました。
そしてこのSCIEのコプロダクションのガイドは、ケアやサポートに関係する人全員、つまりケアやサポートを利用する人、直接ケアを提供する実践者、組織の管理者、施策関係者みんなに関係あるガイドだとこのウェブサイトの早い段階でわかるように書いてあるのだな、と感じました。

この資料では
推奨事項を、文化(culture)、構造(structure)、実践(practice)、振り返り(review)に分けて書いてありました。

コプロダクションの文化や風土、構造は、確かに大事なことだなぁ、と思いました。
実践のところだけに焦点を当ててしまうと、コプロダクションをやっていきたいと奮闘する人にだけ負担がかかってしまったり、できていないことに罪悪感を覚えたりしてしまうことがあるなと思っています。
そして、振り返りや評価についても、ケアや支援を利用している人と共に共同創造で振り返りや評価をしようということも、見落とされがちなことかもしれないなと感じました。

東京大学 コプロダクション研究チーム 宮本有紀

日本のリカバリーカレッジ(2022年10月時点)

共同創造の実践例としていつもご紹介させていただくリカバリーカレッジ。
日本でリカバリーカレッジの理念(共同創造で運営されていて、誰でも参加できる、学びの場)に基づいて活動しているとお聞きしているカレッジの一覧を作りたいと思いつつ、全部を網羅はできていないのでかえってご迷惑をおかけしちゃうかな、と思い掲載を迷っていました。けれど、リカバリーカレッジはどこにありますか、とお問い合わせをいただくこともあるので、私の知っている範囲で、公開されているウェブサイトやフェイスブックページなど情報がわかるかもしれないリンクと共にあげさせていただきます。(2022年10月)

  • ここに載っていないリカバリーカレッジもあると思います。
  • リカバリーカレッジと名乗っていなくても、共同創造によって運営されていて、誰でも参加できる学び合いの場の実践をされているところもたくさんあると思っています。
  • 現在活動をお休みしているところもあるようです。
  • 情報は、宮本調べで、間違いもあるかもしれません。間違いなどに気づかれましたらぜひ教えてください。

リカバリーカレッジ (東京都三鷹市) 2013年開校
https://sudachikai.eco.to/pia/index.html

リカバリーカレッジたちかわ (東京都立川市) 2015年開校
http://recoverycollege.jp/tachikawa/

リカバリーカレッジ名古屋 (愛知県名古屋市) 2018年開校
https://recoverycollege-nagoya.com/

リカバリーカレッジみまさか (岡山県美作市) 2019年開校
https://www.facebook.com/recovery.college.mimasaka/

リカバリーカレッジOKAYAMA (岡山県岡山市) 2019年開校
https://rcokayama.jp/

リカバリーカレッジSAGA (佐賀県佐賀市) 2019年開校
https://m.facebook.com/profile.php?id=100068255426060

リカバリーカレッジあんなか (群馬県安中市) 2019年開校
https://www.facebook.com/recoverycollege.annaka/

リカバリーカレッジおおた (東京都大田区) 2020年開校
https://sites.google.com/edu.teu.ac.jp/recoveryota

リカバリーカレッジねやがわ (大阪府寝屋川市) 2021年開校
https://rcneyagawa.blog.fc2.com/

リカバリーカレッジふくおか (福岡県福岡市) 2021年開校
https://www.rcfukuoka.com/

リカバリーカレッジKOBE (兵庫県神戸市) 2022年開校
https://rcchauchaukobe.jimdofree.com/

リカバリーカレッジ高知 (高知県高知市) 2022年開校
https://linktr.ee/rc_kochi

リカバリーカレッジ、日本でも着実に増えているんだなーと感じています。
東京大学 コプロダクション研究チーム 宮本有紀

リカバリーカレッジ高知の開校

リカバリーカレッジ高知が誕生しました。

開校記念のWebイベント
リカバリーカレッジ高知へGO!(7月24日)
https://www.u-kochi.ac.jp/soshiki/1/20220721.html
に参加させていただき、佐々木理恵さん、山崎正雄さん、リカバリーカレッジ高知の皆様、イベントにご参加くださった皆様とお話させていただきました。
イベントにご登壇された方々のお話がそれぞれにとても心動かされるもので、そのような場に参加させていただきありがとうございました。

リカバリーカレッジって何?というコーナーでは、リカバリーカレッジの理念と実践例(リカバリーカレッジガイダンス)をご紹介しながらりえちん(佐々木さん)とお話しさせていただきました。

その際に、リカバリーカレッジガイダンスに“精神保健福祉サービスとつながる”など、「精神保健福祉サービス」という表現があるが、ここに「医療」が入っていないのは敢えて抜いているのかというご質問をいただきました。
抜いているという意図は全くなく、精神科医療は精神保健サービスに含まれていると考えて、少しでも文字を少なく、というような意図で省略して「精神保健福祉サービス」と表現しておりました。
そのご質問をいただいて、あらためて、言葉一つ一つがとても重要だな、と感じました。またそれと同時に、「精神保健福祉サービス」という表現で伝えようと思っていることも、たとえば精神科医療を利用している患者さんはじめ市民の方には、何を指しているのかイメージがつかめないかもしれないなと思い至りました。
今後さらに表現を考えていきたいと思いました。

それから、教育と言ってしまうと、何か正しいものを教え込むというような印象があるかもしれないけれど、リカバリーカレッジはそうではなくて学び合う、新しいこと知りたいことを知る、そんな場というような話をしていたときに、リカバリーカレッジは大人の学び、成人学習・成人教育だということが重要なところなのではないかというお話があり、本当にその通りだなぁと思いました。

学びの場に出て来ること自体が難しい人がすごく多い、出て行きたいっていう気持ちがあっても、そこに出て行くのに勇気がいる。ということをお話してくださった方がいました。
そんな方達、まだ出会えていない人たちとつながるかけはしとなるような、そんなところ、そんな関係が築けたらいいなと思いましたし、その地に根付いていくということも大切なのだろうなと感じました。

ご登壇されたお一人お一人のお話、いただいた質問のどれもがとても印象的で、新しい関係性を作っていく、つながっていって地域も変わっていく、力強さや心強さも感じながら、わからないことに気付いてこの世の広さにどんどん気付きながら生きていくってことなのかな、などなど感じたり思ったりした時間でした。ありがとうございました。
東京大学 コプロダクション研究チーム 宮本有紀

★追記★リカバリーカレッジ高知についてお問い合わせをいただきました
リカバリーカレッジ高知については以下のリカバリーカレッジ高知のウェブサイトがあるようですのでそちらをご覧ください
https://sites.google.com/view/rc-kochi/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0?authuser=0

共同創造 Co-production 資料22: コ・プロダクション論と日本の福祉供給体制と市民参加

今回は、小田巻友子氏による論文のご紹介です。

小田巻友子 (2018) コ・プロダクション論から見た日本の福祉供給体制における「市民参加」への懐疑. 松山大学論集.  30(4-1),161-182
https://core.ac.uk/download/pdf/230513064.pdf

1 コ・プロダクション概念の広がり
2 公共的なサービス生産への市民の参加をどのように捉えるか
3 日本における福祉社会の言説の浸透
4 日本の地域包括ケアシステムにみる「市民参加」
5 潜在的なニーズの発掘

というような形で日本語で記載されていて、とても勉強になりました。

財やサービスを生産している諸個人やグループを「レギュラーな生産者(regular producer)」、
レギュラーな生産者と一緒に自らが消費する財やサービスの生産に自発的に寄与しようとする
諸個人やグループを「消費者生産者(consumer producer)」と位置づけ、
その双方が貢献することが可能である生産関係を「コ・プロダクション」とする考え方が紹介されていました。
このように考えると、たとえば精神科ピアサポートスタッフは自身の勤務する場ではレギュラーな生産者なんだな、と、
自分の中で整理できました。

また、小田巻氏は
「消費者生産者とレギュラーな生産者がそれぞれ固有の情報をもっており,互いにその情報が見えにくいという
「情報の不完全性」の解消にこそ,サービス生産過程への消費者生産者投入の意義がある」とし
市民の参加を決定の主体とすることが重要であると述べています。
おこなわれるサービスがコ・プロダクティブな自己決定により選択されるならば、
そのサービスの供給は当事者、専門家、それらの協働のどの形で供給されるのでもこだわる必要はない
と述べていて、とても腑に落ちた気がしました。

(リカバリーカレッジでも、どんな講座を受けたいか、どんな講座があるとよいか、
どんな講座に参加するかが当事者主体で決定されていればその供給は誰からでもよいのかも知れないと思うこともあったので)

小田巻氏の論文に、
「私たちはそれらの市民の参加が単なる担い手としてのレベルにとどまっているのか,
実質的な意思決定過程における市民の参加という観点からもその取り組みが説明できるのか注視する必要がある」と
記載されていて、ここでの「市民」を、保健医療福祉における「患者・利用者」として
全く同じことが言えるだろうなと感じました。

また、小田巻氏の注目しているコ・プロダクション事例として
「2000年から本格実施された18歳以上の精神障害者を対象とした公的サービスであるPersonligt ombud(PO)」
についての紹介もあり、さらに知りたいなと思いました。

じっくり読みたい資料や論文がたくさんあるのになかなか読み進められずにおりますが今後も少しずつ重ねていきたいです。
東京大学 コプロダクション研究チーム 宮本有紀

共同創造 Co-production資料21: involve resources

以前資料18でご紹介したINVOLVEのResources(資料集)の中の、Co-productionの項目のご紹介をしたいと思います。https://www.involve.org.uk/resources/methods/co-production (2022/5/22アクセス)

一番上の黄色い部分に「一目でわかるまとめ」的なものがあり、そこには、費用「さまざま」、期間「さまざま」、参加者数「小グループ」、参加者の選定「サービス提供者と利用者」、オンライン・対面「主に対面」とあります。

共同創造についての説明
組織がよいサービスを提供するためには、組織は利用者の必要としていることを理解し、利用者がサービスの構築や提供に密接に関わる必要があるという認識に基づく。これは単に利用者が意見を言うとか、組織の相談に乗るということではなくて、共に、対等な立場で貢献するということ。

共同創造に参加する人
サービスの最前線にいる人、つまりはサービスを提供する人(支援者)と利用者である人がある。

費用
共同創造の過程の長さ、参加者数、参加者への謝礼・報酬によって異なる。

時間
多様。共同創造は時間がかかる。すべての意思決定段階で利用者を巻き込み意思決定をサポートする必要がある。

強み
サービス利用者の感じていることや知恵を活用する
利用者と専門職(や住民と政治家)が対等に協力して互いから学ぶ
そこに参加する人に技術、自信、こんな風になりたいとかこんな風にしたいといった気持ちをもたらす

弱み
グループが大きいと難しい
共同創造に招かれなかった人からすると、排他的なグループ、自分たちの声を代表している人は入っていないように見えるかも
全ての参加者(利用者も専門職も)にとって、時間がかかるし、献身が必要。

そして、このページに動画があって、この動画に、資料19に出てきたHeadway とかPaxton Greenなども出てきています。

共同創造は人数が多いと難しいところがあるな、と感じてはいたのですが、ここにもそう書いてあった!小グループ向きなんだな、と自分の感覚とも合っていることにうれしくなりました。
HeadwayやPaxton Greenの活動について、資料の中の文字だけで読んでいるのと、こうやってそこでの様子がちらっと映っていたり、そこで活動している人の顔が見えるとぐっとイメージがわきやすくなるなと思いました。このあたりも、共同創造のAccessibilityというのでしょうか、それぞれの人のアクセスしやすい形で情報や場を設定する、ということに関係しているのかなと思いました。
なお、この資料は、アップされた日などがどこにも記載されておらず、きっと今後もどんどん更新されていくのだろうな、と思いました。

東京大学 コプロダクション研究チーム 宮本有紀

Co-production 勝手にリカバリーカレッジの応援

共同創造によって学びの場を創り出すリカバリーカレッジが大好きで、勝手に各地のリカバリーカレッジを応援しております。
秋学期のスタートのお知らせをちらほらとお聞きしているので、リカバリーカレッジの講座を受講したい方や知りたい方達に情報が届くようにとここでも公開情報をご紹介させていただきます。
(ご紹介は順不同です。私=宮本が把握したリカバリーカレッジの情報のみ、かつ、公開されている情報のみ、2021/9/3の時点での情報をご紹介しております。受講料の有無はカレッジによって異なるのでご自身でご確認ください。)

リカバリーカレッジ(東京都三鷹市) https://sudachikai.eco.to/pia/course.html こちらのページに、2021年度秋学期講座の講座や申し込みの方法が書いてあるPDFに飛べるリンクがあります。ここにある資料によると、秋学期の受講期間は2021年9月29日~12月22日で、2021年度秋学期は、オンラインと対面の講座があるようです。申し込みは左側に「お申し込み」の欄がありますのでそちらから~

リカバリーカレッジたちかわ (東京都立川市) http://recoverycollege.jp/tachikawa/2021-22autumn/ 秋期講座は2021年9月~11月で、オンラインZOOM開催で、9月4日が始業式とあります! 

リカバリーカレッジふくおか(福岡県福岡市) https://www.rcfukuoka.com/  秋学期は9月下旬~12月のようで、応募期間は2021年8月22日~9月20日とありました!

リカバリーカレッジおおた(東京都大田区) https://www.ota-shakyo.jp/news/05/05/event-20210831161715 は9/14にオンライン講座があります。

COVID-19の感染拡大が落ち着かず、開催について検討継続中のカレッジの話もお聞きしています。早く状況が落ち着くと良いですよね。。

リカバリーカレッジに関する企画(2018年12月14日精神障害者リハビリテーション学会サテライト企画)

2018年12月14日(金)に行われた精神障害者リハビリテーション学会 サテライト企画
RecoveryCollegeを体験しよう!リカバリー入門
に参加しました!

これは、リカバリーカレッジ(東京都三鷹市)とリカバリーカレッジたちかわ(東京都立川市)の共同企画で、とても素敵でした。
たくさんの方がご参加なさっていて、皆さんの関心の高さを感じました。