共同創造Co-production資料42: 大学での精神保健研究の患者市民参画

今回も、研究の共同創造に関連する資料のご紹介です。

論文情報:

Evans J, Da Cunha Lewin C, Fabian H, et al. Facilitators of and barriers to patient and public involvement in mental health research within university settings: a systematic review and meta-synthesis. Psychological Medicine. 2025;55:e297. https://doi.org/10.1017/S0033291725101748

題名は、
Facilitators of and barriers to patient and public involvement in mental health research within university settings: a systematic review and meta-synthesis
(大学における精神保健研究への患者・市民参加の促進要因と障壁:系統的レビューとメタ統合)
です。

研究領域で、患者・市民参画(Patient and Public Involvement: PPI)が重視されるようになってきています。
(このPPIと共同創造は、完全に同じというわけではありませんが、その根底にある価値観は重なっていると思っております。)

この研究では、研究データベースを検索して文献を収集し、最終的には51件の論文から精神保健領域での患者市民参画に関する障壁と促進要因をまとめました。また、この研究には、精神疾患の当事者経験をもつ研究者達が参加していると記載されています。

研究を構築するにあたっての手続き的な面では、PPIのための資金や人材が限られていたり、競争的環境、時間的制約などが障壁として挙げられ、PPIを促進するのに役立つ仕組みとしては、申請にPPIを入れ込むことが挙げられていました。

また、研究の過程での力の不均衡、たとえば研究者が研究プロセスを握っていることも障壁として挙げられていました。また、参加している人たちの多様性が欠如しており、社会から疎外されている人種や識字に困難のある人々がしばしば排除されることについての懸念が挙げられていました。

PPIに価値を置かない組織文化も大きな障壁とされており、研究者がPPIを新しい仕事の方法としてとらえ、当事者経験の価値についてのトレーニングも必要なのではないか、と記されています。

人間関係の構築、オープンで誠実で定期的なコミュニケーションはPPIを促進する要因とされていました。

参加者は、研究や学術的な環境に慣れていないことからくる自信のなさを体験することも多く、参加者が尊重され、意見を言ってみようと思えるような、強力的な環境、安全な空間の重要性も挙げられていました。

今後の研究への市民参画に関する示唆として、権力の再分配(the redistribution of power)、能力開発(building capacity)、安全な取り組み環境(safe working environments)が挙げられていました。

能力開発に関しては、当事者に研究に関するトレーニングを提供することに重点が置かれているが、研究者の能力開発にはあまり焦点があげられていなかったことも、この研究の発見として記載されています。

 

この論文を読みながら、発言しても大丈夫と思えるチーム、安全と感じられるような配慮を互いに行えるチームは、患者・市民だけでなく、研究者にとっても重要であると感じました。また、患者や市民に研究のスキルを研修することに重点が置かれがちで、研究者が生活体験に関する価値を学ぶトレーニングを積むことなどはあまりなされていないということにも思い当たるところが多々ありました。
東京大学コプロダクション研究チーム 宮本有紀

共同創造Co-production資料41: メンタルヘルス科学の第三の柱

研究の共同創造(Co-production)に関する論文がたくさん出版されるようになっており、研究を共同創造でやっていこうという流れが大きくなっているのを感じます。

今回も、研究の共同創造に関連する資料のご紹介です。

論文情報:

Downs J. Beyond the methodological binary: coproduction as the third pillar of mental health science. BMJ Mental Health. 2025;28:e301807. https://doi.org/10.1136/bmjment-2025-301807

題名は、
Beyond the methodological binary: coproduction as the third pillar of mental health science
(方法論の二元論を超えて:メンタルヘルス科学の第三の柱としての共同創造)
です。

この論文では、コプロダクションは理論的理想ではなく、臨床的にも倫理的にも必要なものであるとして、メンタルヘルス領域の研究を質的研究、量的研究といった方法論の二元論を超え、本質的な探究の柱としてコプロダクションを提案しています。

この論文は、conceptual review(概念レビュー)というものを行っていて、文献(研究論文)を検索してヒットしたいろいろな研究や自信の経験から整理して、意味を深く考えながら検証する概念分析という方法でまとめています。

この論文に記載されていることの全てをここで紹介することはしませんが、たとえば、コプロダクションの必要性の項では、人種差別のあるコミュニティ、LGBTQ+の人々、複雑なトラウマの歴史を持つ人々など、社会から疎外されたグループや排除されがちな人々の声を中心に据えた研究などの例が挙げられていました。

また、コプロダクションの倫理的課題として、見かけだけの参加(Tokenism)、感情労働(Emotional labour)、力の不均衡(Power imbalances)、選出や代表性(Selection and representation)、構造的な障壁(Structural barriers)が挙げられていました。

 

ここ数年で研究をコプロダクションで!という論文がたくさん出ていて、読むことすら追いつかない感じです。さまざまなところからこのような声が出て、コプロダクションが当たり前になっていくのだろうな、と思っています。
東京大学コプロダクション研究チーム 宮本有紀

 

共同創造Co-production資料38 精神健康に関する言葉

さまざまな経験をもつ人たちとお話しするときに、これまで医学の領域で使われていたような言葉(病識がない、とか、統合失調症患者、とか)は、何かとても失礼な言葉だったのではないか?と思うようになり、そして、医療者の視点から使っていた言葉でこれまで思考し、行動してきてしまったのではないか?と気づき始めました。

“ケアとサポートで私たちが使う言葉は、態度を形成し、行動に影響を与え、人生に影響を与える。” (Think Local Act Personal. Language.)

Language

ということで、Think Local Act Personalにケアやサポートの領域における言葉「Language」に関する資料がいくつもアップされていました。

そしてその中に、「精神健康に関する言葉」ということで、ケアや支援を利用する人とその領域で働いている人とで作られたガイド(ページ)が掲載されていましたのでご紹介です。

Communicating about mental health

たとえば

Mental health challenges

This is our preferred term for communicating about mental health conditions. We think ‘challenges’ focuses less on something being ‘wrong’ with a person, and more on the difficulties people face with their mental health due to things that have happened to them or are happening around them, and also difficulties with getting support that works for them.

(日本語に勝手に訳してみると↓)

メンタルヘルスの課題(チャレンジ)
これは、私たちが精神健康上の状態について伝える際に好んで使う言葉です。 私たちは、”課題 (チャレンジ)”という言葉は、その人の何かが “悪い “ということよりも、その人の身の回りで起きたことや起こっていること、またその人に合ったサポートを受けることの難しさによって、その人が精神的な健康に直面する難しさに焦点を当てたものだと考えています。

というような解説があります。

 

これは英語の言葉についてのガイドなのですが、これを日本語に訳すというよりも、日本の人にとっての好ましい日本語の言葉を考えることが重要なのだろうと思います。また、言葉は、時代と共に変わっていくものですのでどの言語だったとしても、継続的なアップデートは必要なのでしょう。
私自身は、臨床実践や、講義や研究をする中で、これまで、失礼な表現や、言われた人が傷つくような言葉をたくさん使ってきてしまったと思っています。そのことを考えるだけで申し訳ない思いになりますし、自分に対しても悲しくなります。しかし、今後誰かを傷つけることを恐れて何も言わないのではなく、なんという表現が良いか、共同創造の中で確認しながら、そしてお互いに勇気をもって思ったことを差し出し合える、そんな関係を築いて進めていけたらと感じています。

東京大学コプロダクション研究チーム 宮本有紀

共同創造Co-production資料35 Co-production collective(共同創造に関する組織)

共同創造について調べたい時に、「co-production」という言葉でインターネットを検索するとさくさんの情報がヒットします。(正直なところ、読みたい情報が多すぎて、もうなかなか間に合わないのですが)

今回は
Co-Production Collective https://www.coproductioncollective.co.uk/
という集まり(組織?)についてのメモです。

Co-Production Collectiveという組織は、元は、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London = UCL)という大学のメンバーも設立にかかわっているようです。現在はUCLの、Co-Production and Public Engagement at UCL https://www.ucl.ac.uk/public-engagement/ の一部になっているようです。2017年にできたようで、「医療の研究、革新、実践における共同創造をサポートするセンター」を共同設立しようと集まったとのことで元はUCLコプロダクションセンターという呼び名だったそうです。

この集まりには、なんらかの当事者としての経験がある人、市民、研究者、その他共同創造が実践されている職場で働いている人などが参加しているそうで、自分達に支払われる謝金や方針なども共同創造で決めているとのことです。

資料の掲載 https://www.coproductioncollective.co.uk/championing-co-production/resource-library や、一緒に共同創造しましょう!という募集などさまざまな情報があります。

 

この組織の活動を補佐しているチーム(事務局的な?)や相談に乗ってくれるチーム(さまざまな経験のバックグラウンドのある人々)などについても、写真付きで公開されていて(おそらく載せて良い人だけですが)、そこに人間がいることを感じることができました。また、こういった活動をしていくためにもつながり方や役割がいろいろあることや、誰かがどこかで決めているということではなく、そこに参加している人が見える、ということにも意味がありそうだなと感じました。
日本でもこんなことができたらいいな、しかも、いろいろなところで(誰もがアクセスしやすい各地に)できたらいいな、と思ったりしています。
東京大学コプロダクション研究チーム 宮本有紀

 

Ksenija Kadicさん(Recovery College C & I)との交流会20230831

Ksenija Kadicさん(クセーニャ・カディックさん:ロンドンのリカバリーカレッジCamden & Islingtonのマネージャー)と日本のリカバリーカレッジに関わる皆さんでの交流会を2023年8月31日にZOOMで開催しました。
Ksenijaさんがお休みに日本に来日されるとのことでご紹介いただき(ゆかさんご紹介ありがとうございます!)、日本のリカバリーカレッジの運営にかかわるみなさんと交流する機会をいただきました。 全国のリカバリーカレッジに関わっている皆さんが参加できるよう、この交流会はZOOMで企画しました。
(今回の催しは主にリカバリーカレッジネットワーク(リカバリーカレッジの運営に関わっている方たちのネットワーク)の仲間たちにお声かけしました。)

クセーニャさんのこと、リカバリーカレッジC&Iのこと、トレーナー(チューターとも。講座講師)のための研修について、コ・プロダクション(共同創造)とリカバリーや、リカバリーカレッジの重要な柱であるHope、Opportunity、Controlについてなど、たくさんお話ししていただき、盛りだくさんであっという間の2時間でした。
リカバリーカレッジについて、リカバリーについて、自分の経験をシェアすることについて、いろいろ考えました。
Ksenijaさん、ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。

写真にうつってもよい、撮った写真はSNSで使用してもよいと思う方だけで撮影した写真です↓
ZOOM Mtg

Ksenija Kadic (Manager of Camden & Islington, a recovery college in London) and people involved with recovery colleges in Japan had a social event at ZOOM on August 31, 2023.
Ksenija was visiting Japan for her vacation (thank you to Yuka for connecting us!), and we had the opportunity to meet with people involved in managing recovery colleges in Japan. We organized this meeting through ZOOM so that anyone from all over the country could participate.
(I mainly invited our colleagues in the Recovery College Network, a network of people managing recovery colleges, to participate.)

We heard Ksenija’s introduction, the Recovery College C&I, and courses and trainers (also known as tutors). It was an inspiring and fast two hours, as we talked a lot about the training for trainers, co-production and recovery, and the essential pillars of recovery college: Hope, Opportunity, and Control.
I thought a lot about what recovery colleges are, about recovery, and about sharing experiences.
Thank you so much to Ksenija and everyone who attended.

The photo was taken only with those willing to be photographed and to use the snap on social networking sites.

共同創造Co-production資料23: SCIE What it is and how to do it 2022

共同創造の資料でしょっちゅうsocial care institute for excellence (SCIE) を見ています。
2022年の7月に更新された”Co-production: what it is and how to do it” https://www.scie.org.uk/co-production/what-how について自分のメモを残しておきたいと思います。
(この資料は、全てウェブ上に記載されていて、PDF(21ページ)で欲しい人はSCIEに登録するとダウンロードできるものです)

以下はメモと感想です。

このガイドは誰のため?
managers and commissioners (管理者とコミッショナー)
frontline practitioners (実践者)
people who draw on care and support (ケアやサポートを利用する人)

とあります。

英国の資料を見ていると、「コミッショナー(委託者)」という表現が出てきて、最初はイメージがつかめなくて、コミッショナーと書いてあるところを読み飛ばしたりしていたのですが、今の自分の理解では、コミッショナーというのは、医療や福祉の施策・政策を考えたり、医療福祉施設に指示を出したり規制をしたりする人達(日本で言うと、自治体とか厚労省とかにあたるのかな)となんとなく考えています。(あくまでも私のイメージであって、違うかもしれません)

コプロダクションのガイドは様々なウェブサイトに掲載されているのですが、たとえば患者や市民の立場で情報を探しているときに、政策立案者向けの資料とかを読むよりは、市民向け、とか、そういった想定している読者が最初に書いてあると、探す情報がみつけやすいのだなと思いました。
そしてこのSCIEのコプロダクションのガイドは、ケアやサポートに関係する人全員、つまりケアやサポートを利用する人、直接ケアを提供する実践者、組織の管理者、施策関係者みんなに関係あるガイドだとこのウェブサイトの早い段階でわかるように書いてあるのだな、と感じました。

この資料では
推奨事項を、文化(culture)、構造(structure)、実践(practice)、振り返り(review)に分けて書いてありました。

コプロダクションの文化や風土、構造は、確かに大事なことだなぁ、と思いました。
実践のところだけに焦点を当ててしまうと、コプロダクションをやっていきたいと奮闘する人にだけ負担がかかってしまったり、できていないことに罪悪感を覚えたりしてしまうことがあるなと思っています。
そして、振り返りや評価についても、ケアや支援を利用している人と共に共同創造で振り返りや評価をしようということも、見落とされがちなことかもしれないなと感じました。

東京大学 コプロダクション研究チーム 宮本有紀

英国でのCo-production週間(7月)

英国で、「共同創造週間」とでもいうのでしょうか、National Co-production Weekというのが7月にありました。2022年は7月4日から9日だったようです。(へー!と思いつつ遅れてのポストですが)

たとえばこちらに記事あり↓

https://www.scie.org.uk/co-production/week

この共同創造週間では、共同創造による恩恵(よいこと)を祝い、良い実践(good practice)を共有し、サービスを利用する人やその人をケアする人たちがよりよい公共サービスを作り上げることを促進する、というような週間のようです。

この週間は2016年からはじまっているようで、2022年は7回目とのことです。

こうやっていろいろな人にコプロダクションの考え方を知ってもらったり、実践している人たちの知恵や工夫が共有される仕組みを作っているんだな、と感じましたし、このようなことを積み上げて行くことの大切さも感じました。
東京大学 コプロダクション研究チーム 宮本有紀

共同創造 Co-production資料21: involve resources

以前資料18でご紹介したINVOLVEのResources(資料集)の中の、Co-productionの項目のご紹介をしたいと思います。https://www.involve.org.uk/resources/methods/co-production (2022/5/22アクセス)

一番上の黄色い部分に「一目でわかるまとめ」的なものがあり、そこには、費用「さまざま」、期間「さまざま」、参加者数「小グループ」、参加者の選定「サービス提供者と利用者」、オンライン・対面「主に対面」とあります。

共同創造についての説明
組織がよいサービスを提供するためには、組織は利用者の必要としていることを理解し、利用者がサービスの構築や提供に密接に関わる必要があるという認識に基づく。これは単に利用者が意見を言うとか、組織の相談に乗るということではなくて、共に、対等な立場で貢献するということ。

共同創造に参加する人
サービスの最前線にいる人、つまりはサービスを提供する人(支援者)と利用者である人がある。

費用
共同創造の過程の長さ、参加者数、参加者への謝礼・報酬によって異なる。

時間
多様。共同創造は時間がかかる。すべての意思決定段階で利用者を巻き込み意思決定をサポートする必要がある。

強み
サービス利用者の感じていることや知恵を活用する
利用者と専門職(や住民と政治家)が対等に協力して互いから学ぶ
そこに参加する人に技術、自信、こんな風になりたいとかこんな風にしたいといった気持ちをもたらす

弱み
グループが大きいと難しい
共同創造に招かれなかった人からすると、排他的なグループ、自分たちの声を代表している人は入っていないように見えるかも
全ての参加者(利用者も専門職も)にとって、時間がかかるし、献身が必要。

そして、このページに動画があって、この動画に、資料19に出てきたHeadway とかPaxton Greenなども出てきています。

共同創造は人数が多いと難しいところがあるな、と感じてはいたのですが、ここにもそう書いてあった!小グループ向きなんだな、と自分の感覚とも合っていることにうれしくなりました。
HeadwayやPaxton Greenの活動について、資料の中の文字だけで読んでいるのと、こうやってそこでの様子がちらっと映っていたり、そこで活動している人の顔が見えるとぐっとイメージがわきやすくなるなと思いました。このあたりも、共同創造のAccessibilityというのでしょうか、それぞれの人のアクセスしやすい形で情報や場を設定する、ということに関係しているのかなと思いました。
なお、この資料は、アップされた日などがどこにも記載されておらず、きっと今後もどんどん更新されていくのだろうな、と思いました。

東京大学 コプロダクション研究チーム 宮本有紀

共同創造Co-production 資料20: co-production SCIE動画

共同創造(コプロダクション)についての動画です。こちら、以前にもご紹介した social care institute for excellence (scie)のSocial Care TV  https://www.scie.org.uk/socialcaretv/ の中の「Co-production and participation videos」https://www.scie.org.uk/socialcaretv/topic.asp?t=coproduction のうちの一つです。

今回ご紹介する「Have we got co-production news for you: episode one」は、YouTube https://www.scie.org.uk/socialcaretv/video-player.asp?v=havewegotcoproductionnewsforyou1 でも見ることができます。

5分12秒の動画で、共同創造についての問いにクイズ形式的に出演者が答えていく、というもので、SCiEのコプロダクション長や、ほかの部門の方、Care Leaversのコンサルタント、Think Local Act Personalのコプロダクション/平等部門長やLambethのコミッショナーなどが楽しそうに出演しています。

第1問:共同創造(コプロダクション)はお金の節約になるか?

共同創造をはじめるにあたっては、お金の節約にはならない。たくさんの資源を投じる必要がある。これはお金のことだけでなく、時間。そこに関わる全ての人の時間を投じる必要がある。とはいえ、長い目で見ればたぶんお金の節約になる。なぜなら、人々が本当に欲しいサービスとなるはずなので無駄が少なくなるはず。

第2問:共同創造できない人っていますか?

どんな人、どんな患者、どんなニーズ、どんな能力、どんな状況の人も共同創造できる。

第3問:Participation(参加や参画)とCo-production(共同創造)は同じか?

違う。同じではない。ただその場で席についているだけでも「参加していた」ということになる。しかし、共同創造というときには、まったく違うものだ。本当に最初の段階から関わって、そのプロセスを一緒に歩む。
専門職から利用者へ権限を委譲、共有することとなる。そこが共同創造の難しいところ(やりがいのあるところ)。

第4問:共同創造は簡単な選択肢だろうか?

管理職にとって、共同創造というのはとても耳障りがよく、いいね、これやろう!共同創造でやろう!と管理職は言いがちだが、最前線の実践者にもその考えが届き、確かな共同創造となっていなければ、よい効果は得られない。聞こえが良いだけのものとなってしまう。

というものでした。

文章でも、実践のためのメッセージ、ということで、
1.共同創造をはじめるときには時間と資金を。
2.プロセスのはじめのところから、サービスを利用する人々と対等で完全なパートナーシップを築くよう努める。
3.専門職の権限をサービス利用者の人々へ委譲していく方法を考える。
4.組織で働くあらゆる層のすべての人が共同創造に取り組む。
5.それぞれの集団、それぞれの特徴によって異なるアプローチが必要となるかもしれない。

ということが書かれていました。

短い動画で、いろいろな立場の人が楽しそうに参加している動画でした。また、おそらく、さまざまな障害やバックグラウンドをお持ちの方が登壇していて、そのことは特に語られておらず、それが当たり前のように一緒に話している、こういったところにも共同創造を示しているんだなと感じました。きっと何かのクイズ番組の真似なのだろうな、と思って調べてみたところ、どうやら、Have I Got News For You という、イギリスのBBCのニュースクイズ番組(おそらく老舗番組)を真似て楽しみながら、内容をコプロダクションについて真面目に話す、という趣向のようです。文章で教科書的に書いてあるよりも伝わってくることがいろいろありました。動画の力ってすごいなと思いました。

東京大学コプロダクション研究チーム 宮本有紀

共同創造Co-production 資料19続き3: 共同創造の実践

資料19「Public Services Inside Out: Putting co-production into practice」(2010年4月発行)
https://neweconomics.org/2010/04/public-services-inside
共同創造の実践 の中身のご紹介の続きです。(前回は資料19続き1 にPart 1とPart2を、資料19続き2 にPart 3とPart 4をご紹介しました)

Part 5: Facilitating rather than delivering  提供するのではなく促進する

共同創造されたサービスであれば、「この人はどのサービスを必要としているだろう?」という問いではなくて「この人はどんな暮らしを送りたいだろう?」「この人にとっての豊かな暮らしとはどんなものと感じているだろう?」という問いからはじまるのではないだろうか。

実践例:
Local Area Co-ordination (LAC) (もとはオーストラリア西部で1988年にはじまったアプローチで今やオーストラリア、スコットランド、カナダ、アイルランド、ニュージーランドなどに広がっている。個人はみんな違い、障害のある人にとっての豊かな暮らしの核となるものは、障害のない人にとっての豊かな暮らしの核となるものと変わらない、という考えに基づいている。LACでは個人や家族、地域の貢献が価値あるものとされ、LACでは個人のネットワークやコミュニティのネットワークの中でそれぞれの技術や資源や強みが提供されるようにサポートしている。LACのサービスは他のサービスよりもコストは低く、また家族がケアを続けやすく、自立度が高まるといった調査結果がある。たとえば重度のサポートが必要な子をもつ親同士をつなげたことにより、それぞれの子供が特別な送迎手段を手配するのではなく、家族が交代しながら自家用車で毎日学校に通うことができるようになった例などを含め、その地域の中で、それらの個人の生活に合わせて、個人と専門職によって共同創造されている。
KeyRing(知的障害のある方のための居住や相談サービス。9名の成人メンバーと1名のボランティアが徒歩15分圏内くらいに住み、ボランティアはメンバーの居住や地域とつながるためのサポートを提供する見返りに無料で住まうことができる。)

Part 6: Recognising people as assets  人々を資産として認識する

人々を、受け身のサービス利用者、あるいはシステムのお荷物として見るのではなく、サービス構築やサービス提供の対等なパートナーとして認識する

実践例:
Paxton Green(時間ベースの通貨timebankingを活用している診療所。自分の得意なことを誰かに教えたり、誰かを車に乗せてあげたり、お話をしたり、など、相互サポートの考え方が根底にある。ここでは患者のことを、どのような健康問題があったとしても、様々な経験、技術、時間、ほかの人とつながる人間力のある人として見る。多くの医師は、薬よりも、週に一度の友好的な時間の方がその患者に効くのではないかと思うことも多いものだが、タイムバンクを活用することで、そのような社会的処方をすることができ、相互的な解決が得られる。そして、医師による患者に対する見方も変わった。)
Elderplan Member to Member Scheme, Brooklyn US(健康保険企業によって運営される。メンバーがほかのメンバーの世話をすることでタイムドルを得て、自分が必要な時にはまたほかの誰かからサポートを受けられる。誰かのサポートをするメンバーにとっても、朝ベッドから出る理由となり、健康への効果があった。)

Co-housing at the Threshold Centre(共同住居)

Fureai Kippu, Japan 日本の「ふれあい切符」も紹介されていました!

Part 7: Challenges, conclusions and future work 結論と今後の課題

どの実践も、成功している部分と、課題の両方がある。

サービスの「提供」ではなく、サービスの共同創造(Co-production)を主流としていくための課題としては
1.Funding and commisioning co-production activity 共同創造にお金をつけて、共同創造活動が行われるような方針が必要。共同創造は幅広く多重な活動であるため、効率性や特定の目的・効果を重視してしまうコミッショナー(理事や役員?)からすると、共同創造はなんだかまとまりのないものに見えてしまう。(たとえば地方政府がサービスを地域の事業所などに発注するにあたっては)コストの安さだけで選ぶのではなく、サービスの共同創造が行われているかも質問に入れるなど。
2.Generating evidence of value for people, professionals, funders and auditors 住民や専門職、自治体などにとっての価値を数値でも伝えられるようにエビデンスを蓄積していく。
3.Taking successful co-production approaches to scale ある地域で行われているものはほかのところでも再現可能なのだろうか。共同創造は小さな組織に合うもので、顔の見える関係の中で成功していく。これらを拡大していくにあたっては、ヒエラルキーのあるような、あるいは中央集権的なものから離れなければならない。各地域に広げたとしても、その地域地域での規模は小さくする。ほかの地域をそのままコピーして導入するというのは失敗につながる。
4.Developing the professional skills required to mainstream co-production approaches 共同創造を実践する人にはどのようなスキルが必要だろうか?人々のもっている力を資源として見るスキル、人々が自分自身で発展していくためのスペースを作るスキル、人々に対して何かをするのではなく共に活動するスキルが必要である。ケアする文化から、可能性を広げる文化への変換。その地域についての知識や、その知識を持っている人とつながる能力が必要。

この資料が、12年前に発行されていたんだなぁ、と思うと、すごいなぁと思いますし、その後さらに共同創造実践は英国でどんどん発展しているのだろうと思いました。
なお、英国の資料を読むときに、日本とは医療や福祉の制度が異なるので、ピンとこないところも多々あります。たとえばコミッション、コミッショナーというのがよく出てきて、おそらくイメージとしては、国とか自治体とかがたとえば地域住民の健康を守る事業を事業者にこんなことをしてくださいって条件を提示して、入札した事業者の中から発注先を選んで委託する、って感じなのかなぁ、と思っています(詳しい方、教えてください)。そして、たとえば福祉の場合、ケアの質がしっかりしていいて価格の安いところへ発注していたのを、今後は共同創造のなされ度合いなども、その条件として問うてはどうか、というのがPart 7の1で述べていることなのかなぁと思いましたがどうなのでしょう。それに加えて、英国の制度やシステムの在り方もどんどんと変わっていく印象があって、なかなか意味を読みこなせないところも。。
東京大学 コプロダクション研究チーム 宮本有紀